トランプ氏、ブラジルに計50%関税 航空機やエネルギーは対象外

トランプ米大統領はブラジルに追加的に40%関税を課す大統領令に署名し、同国に対する関税率を合計50%に引き上げた。同日撮影(2025年 ロイター/Evelyn Hockstein)
[ワシントン/ニューヨーク/ブラジリア/サンパウロ 30日 ロイター] - トランプ米大統領はブラジルに追加的に40%の関税を課す大統領令に署名し、同国に対する関税率を合計50%に引き上げた。ホワイトハウスが30日、明らかにした。トランプ政権が反対するブラジルの政策が理由としている。
ただ、航空機、エネルギー、オレンジジュースなどを対象から除外し、影響を和らげた。
ブラジルのロジェリオ・セロン国庫局長は「最悪のシナリオには直面していない」と記者団に語った。
ホワイトハウスは大統領令に関するファクトシートの中で、関税とブラジルのボルソナロ前大統領の起訴を関連付けている。ボルソナロ氏は2022年の選挙での敗北を覆すためにクーデターを企てた容疑で裁判にかけられている。
関税適用除外の対象には民間航空機、銑鉄、貴金属、木材パルプ、エネルギー、肥料など、数十の主要な対米輸出品目が含まれる。
ブラジル政府が最も懸念していたのはエンブラエルが製造する航空機が関税の対象となることだった。同社は民間航空機の45%、役員用ジェット機の70%を米国に輸出している。
しかし、元貿易担当高官のウェルバー・バラル氏は、喜ぶのは時期尚早だと警告。米国に輸出されているブラジル製品は約3000品目に上るとし、このうち除外を受けたのはごく一部に過ぎないとの見方を示した。
大統領令には米国への主要な輸出品目の牛肉とコーヒーの免除は含まれていないとし、「(関税の)影響はあるだろう」と語った。
ブラジル政府は、ルラ大統領が署名した声明文を公表し、貿易に関して米国と交渉する意思は変わらないとしつつ、国内法の下で自国を守る手段は放棄しないと強調した。
声明文は、関税を擁護するために「政治的な議論」を用いることは「正当化できない」とした。また、米国の制裁対象となったブラジル最高裁のモラエス判事への連帯を表明、ブラジルの司法制度への「容認できない」干渉だとした。
ブラジル政府は、米国の措置の影響を評価し、ブラジルの労働者、企業、家族を支援し保護するための行動を準備しているとした。
ゴールドマン・サックスは、米政府が発表した適用除外リストを考慮すると、ブラジルからの輸入品に対する米国の実効税率は30.8%となり、以前に算出した水準を6%ポイント下回ると指摘した。
ゴールドマンは、関税がブラジルの国内総生産(GDP)伸び率に与える影響は0.15%ポイントのマイナスになるとしながらも、現在の予測に対するリスクが「上振れ」であることから、経済成長率予測の調整は行わないとした。