最新記事

中国経済

中国進出の外資企業、景気減速でも巨大マーケットの消費者に熱視線

消費者向けの商品を扱う外資系企業の多くは通年で売上高が伸びたと報告

2016年2月8日(月)10時56分

2月2日、中国の景気減速は製造業に痛手を与えているが、同国に進出している外資系企業の中でもコーヒーショップ、ハンバーガーショップ、衣料品店などから聞こえる声は明るい。写真は南京で4日、中国の旧正月(春節)の到来を祝うサルのランタンを撮影する人。提供写真(2016年 ロイター)

 中国の景気減速は製造業に痛手を与えているが、同国に進出している外資系企業の中でもコーヒーショップ、ハンバーガーショップ、衣料品店などから聞こえる声は明るい。

 大手外資系企業のうち、中国事業について投資家向け情報を更新した34社からのコメントや発表をロイターが検証したところ、セクターによって状況が違っている。

 34社のうち18社は消費者向けの製品を持っており、そのうち13社は第4・四半期、あるいは通年で売上高が伸びたと報告。売上減少したのは3社、横ばいは2社にすぎない。

 だが、調査対象に含まれる工業セクター企業8社のうち、6社は中国事業の不振や、売上高減少に苦しんでいる。

 第4・四半期の中国経済成長率は2009年以来最も低い水準となったが、米スターバックス、スウェーデンの製紙大手SCA、アパレル小売大手ヘネス&マウリッツ(H&M)、米マクドナルドは、いずれも順調な成長を見せた。

 スターバックスのハワード・シュルツ会長兼最高経営責任者(CEO)は「中国での弊社の成功は、直近の四半期で特に顕著だった」と語る。スターバックスは他の多くの外資系企業と同様、会計上、中国事業の業績を区別していない。

 「この四半期、私たちは中国で150店舗をオープンした。創業以来、最も多い開店数だ」と、シュルツCEOは先月の投資家向け電話会議で語った。

 米マクドナルドは中国における第4・四半期の既存店売上高が4%増加したと発表。また今年は、同社が進出している市場のなかで最多となる、250店舗以上の出店を予定する。

 同社のスティーブ・イースターブルックCEOは先月25日、投資家に対し、「中国という重要な市場のポテンシャルにも、ブランドをいっそう拡大していくために私たちが導入している戦略にも、引き続き自信を持っている」と語った。

 紙おむつも手掛けるSCAのマグナス・グロスCEOによれば、中国人口が、村落部の貧困層から都市部の中間層へとシフトするスピードは他の新興国と比較にならないほど速く、同社事業にとって非常に大きなチャンスが生まれているという。

 だが、工業セクターの状況はそれほど明るくない。

 建機メーカーのキャタピラーや独シーメンスは昨年不振に見舞われた工業セクター企業に属する。エレベーターや冷蔵設備を製造する米ユナイテッド・テクノロジーズは、今年さらに売上高が減少すると予測している。

 シーメンスのジョー・カイザーCEOは先週投資家に対し、「短周期ビジネスは、中国における2桁の売上減による影響を受けた」と語った。「中国経済は今後も減速するだろう。持続的な需要関連の回復があるかどうかはまだ分からない」と述べている。

経済の成熟が進む

 複数の企業トップは、このように消費者向けセクターと工業セクターとで業績がかい離しているのは、中国経済が工業主導から消費主導へと成熟しつつある正常な兆候だと話している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中