最新記事

中東

サウジ=イラン関係は悪化の一途たどる恐れ

両国ともに相手国や周辺各国の対立勢力を煽動し軍事行動を誘発する可能性も

2016年1月6日(水)18時44分

1月6日、今回鮮明になったサウジとイランの対立劇は、今後悪化の一途をたどる恐れがある。写真はサウジアラビア国旗。ドーハで2005年12年撮影(2016年 ロイター/Jamal Saidi)

 サウジアラビアとイランが過去に国交を断絶したのは直近では1988年まで遡り、その後、1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻という形で中東地域のパワーバランスの変化をもたらした。

 今回鮮明になったサウジとイランの対立劇が、当時よりも穏便な展開を経てやがて収まりがつくと考えるのは難しい。それどころか、両国の関係は今後悪化の一途をたどる恐れがある。

 複数の外交筋によると、現在起きている危機の核心は、サウジがサルマン国王の即位以降、イランとその連携勢力に対して軍事力で立ち向かう姿勢を強めていることにある。国王はムハンマド・ビン・サルマン副皇太子を腹心として選び、舞台裏での根回しを駆使した外交を放棄しようとしている。

 サウジは昨年、イエメンでイランと同盟する軍事勢力が政権を握るのを防ぐため武力行使に踏み切り、シリアでもイランと手を組むアサド大統領に反抗する諸勢力の支援を強化した。サウジがシーア派の有力指導者ニムル師の死刑を執行したのは、主に国内政治情勢が理由とはいえ、イランとのあからさまな対決方針も一因になっている、というのが政治アナリストの分析だ。

 こうした軍事介入は、サウジにとってはイランによる中東各地域への影響力行使が「野放し」にされているという不満が何年も積み重なった結果といえる。イランが各地のシーア派勢力を支持し、ペルシャ湾岸諸国の反政府グループに武器を密輸した、ともサウジは批判している。

 サウジのジュベイル外相は4日ロイターに「われわれはイランが地域の安定を損い、わが国や同盟国の国民に危害を加えるのを看過せず、対抗していく」と語り、強硬姿勢を崩さない構えを示した。

 シリアやイエメンでの軍事介入は、イランが欧米などとの核合意よって中東で積極的行動を取るための資金力や政治力を高めることへの警戒感の裏返しでもある。

相互不信

1960─70年代までは、サウジとイランは決して心から許せる間柄ではなかったものの、米国がソ連の中東への影響を抑える戦略における「2本柱」として連携する関係にあり、宗派上の争いも表面化しなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は5カ月ぶり高値、半導体買われ3万9000

ビジネス

焦点:昨夏の市場暴落再来に警戒感、大口投資家が備え

ビジネス

香港中銀が為替介入、ペッグ下限到達で12億米ドル売

ビジネス

午後3時のドルは144円半ばで上値重い、FRBの独
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 5
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 9
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中