最新記事

東アジア

日中韓関係と日本の課題

2015年11月6日(金)17時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 北朝鮮は、毛沢東時代から、実は中国を怒らせていた。

 金日成と旧ソ連のスターリンによる陰謀で、朝鮮戦争に駆り出された中国は、やむなく中国人民志願軍を北朝鮮に派兵し、多くの犠牲を払った。毛沢東の息子も、朝鮮戦争で戦死している。

 にもかかわらず、1953年に朝鮮戦争が休戦すると、金日成は自分の業績を讃えて北朝鮮内における権威を高めるべく、中国人民志願軍の貢献を薄めようと(ほぼ否定しようと)したのだ。

 毛沢東は激怒したが、このとき「脣亡歯寒」(唇がなければ、歯が寒い)という4文字熟語を用いて、耐えた。

「脣亡歯寒」という言葉は、「互いに助け合うべき関係にある者同士は、一体であってこそ力を発揮することができるのであって、一方がいなくなってしまうと、もう片方も危くなること」を示す言葉だ。「唇が歯を保護してくれている。剥き出しになると、歯がやられる」という、春秋時代からの教訓である。

 そのための「血の同盟国」ではあっても、中国寄りで改革開放を北朝鮮で進めようとした張成沢(チャン・ソンテク)が惨殺(公開処刑)されたあとは、中朝関係はいっそう険悪だ。

 しかし、この「唇」(北朝鮮)を捨ててしまうと、「歯」(中国)が寒い(危ない)。

 そこで中国は「歯」を守る「唇」として、北朝鮮を一応そのままにしておき、積極的に「韓国」を「活用」する道を選んだのである。

 歴史問題に関しては、すでに11月2日付の本コラム <日中韓首脳会談――中国こそ「歴史直視」を>で十分に述べたので、ここでは省略する。

韓国にとっての日中韓と日韓――北の脅威と米中の狭間で

 このような中国による「抱き込み戦略」は、アメリカにとって面白いはずもないだろう。アメリカと韓国の間には、れっきとした「米韓相互防衛条約」という軍事同盟がある。この米韓軍事同盟により、韓国は北の脅威から守られていたはずだ。それは朝鮮戦争(1950年~53年)において、アメリカが韓国側に付いて北の南下を食い止めてくれたので、53年7月に休戦となった直後に、「どうか、今後も韓国を北の脅威から守って下さい」という趣旨で、同年10月に調印されたものである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:中国の対日レアアース規制、長期化の可

ワールド

米財務長官、グリーンランド巡る「ヒステリー」否定 

ビジネス

中国、消費促進へ新たな措置を計画 サービス部門が焦

ビジネス

仏産ワインに200%関税とトランプ氏、平和評議会参
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中