最新記事

外交

南シナ海の米中対立がマレーシアに強いる「綱渡り」

軍事で米国、経済では中国と密接な関係を築いてきた国にも変化の兆し?

2015年11月5日(木)17時45分

各国の思惑が交差して──  11月4日、ASEAN拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。写真は南シナ海スプラトリー諸島にある中国の人工島。5月代表撮影(2015年 ロイター)

 クアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。

 このことは、マレーシアと他の東南アジア諸国が中国と米国の間で、いかに難しい綱渡りを余儀なくされているかを物語っている。特に先週、米海軍の駆逐艦が南シナ海南沙(同スプラトリー)諸島に派遣され、中国が造成した人工島付近を航行してからはなおさらだ。

 マレーシア政府の統計によると、中国は同国最大の貿易相手国。フィリピンやベトナムなど同じく南シナ海で領有権を争う他の東南アジア諸国とは対照的に、マレーシアは大抵の場合、中国の軍事的進出に対する懸念は大したことではないように振る舞ってきた。

 だが米国防当局者らの話では、マレーシアは他の東南アジア諸国と同様、南シナ海における中国の海洋進出に対抗するため、米国の軍事的プレゼンス拡大を求めているという。

 「地域全体で求められているのが分かる。マレーシアがいい例だ」と、米国防総省高官は語った。

 カーター米国防長官は5日、米軍の原子力空母を視察するが、それにはマレーシアのヒシャムディン国防相が同行。カーター氏はマレーシア海軍も訪問する。

 両国はまた、海兵隊による合同軍事演習も来週に控えている。

 「他の分野でも合同軍事演習の招待を受けている。多くの活動が進行中だ」と、前述の米国防総省高官は述べた。

 マレーシアは、東南アジアを通過する米軍の艦船や航空機に補給などの支援を行う取り決めを長い間結んでおり、同国の港には米艦が頻繁に寄港している。

 米議会調査局(CRS)によると、マレーシアに寄港した米艦船数は2000年代初めにはほんのわずかだったが、2011年には年間30回以上と着実に増加している。

 マレーシアのある高官は今週、同国が中国寄りにも米国寄りにも見られてはいけないとし、「バランスを取らなければいけない」と匿名を条件に語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済「想定より幾分堅調」の公算、雇用は弱含み=F

ワールド

ハマスは武装解除を、さもなくば武力行使も辞さず=ト

ビジネス

情報BOX:パウエルFRB議長の講演要旨

ワールド

米の対中関税11月1日発動、中国の行動次第=UST
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中