最新記事

外交

南シナ海の米中対立がマレーシアに強いる「綱渡り」

2015年11月5日(木)17時45分

 ヒシャムディン国防相も今週、同地域外の国々が緊張を高めないことを望んでいるとし、「われわれは中国とも米国とも関わり続ける。実際に両国と関わっているという事実こそが、両国への明白なメッセージだ」と語った。

 

中国の哨戒活動

同地域で高まる安全保障問題、とりわけ中国の海洋進出にマレーシアがもっと注意を払うよう、ここ数年訴えてきたと、米国など西側の外交官らは語る。

 中国軍の艦船は、マレーシア領ボルネオ島のサラワク州沖にある曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近で定期的に哨戒活動を行っている。

 衛星画像を見た外交官や専門家は、中国の巡視船がジェームズ礁の北方に位置する南康暗沙(同南ルコニア礁)でも半永久的なプレゼンスを維持しているとみる。

 「広範な安全保障問題、特に南シナ海におけるマレーシアの役割と重要性は、戦略上ますます高まっている」と、ある西側の外交官は指摘。「重要なのは、マレーシアが先頭に立ち中国と対立することを期待するのではなく、同国が正しいことを行うよう促すことだ」と語った。

 だが、当のマレーシアは中国を疎遠にしようとはしていない。同国はマラッカ海峡で9月、中国海軍と合同軍事演習を実施した。

 マレーシアは伝統的に、軍事的には米国と、経済的には中国と関係を築いてきたと、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のシニアフェロー、Oh Ei Sun氏は指摘。

 しかし、9月に行われた中国との合同軍事演習や、米国などが主導する環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加は、マレーシアと米中との関係がいかに深化しているかを如実に示すものだと同氏は説明。「両国との間で綱渡りを強いられるため、ますます困難な仕事となる」との見方を示した。

 (Yeganeh Torbati記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[クアラルンプール 4日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2015トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 10
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中