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ノーベル賞受賞、中国はどう受け止めているのか

2015年10月6日(火)18時20分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 西側的価値観による奨であるとしてノーベル賞そのものを否定していた中国が、平和賞受賞者である劉暁波投獄に対する国際世論の批判を埋め合わせるためなのかいう疑問が、一時世界的な噂になったことがある。

 このときはCCTVをはじめ、中国のメディアの扱いが異常なほど熱狂的だったこともまた注目すべきだろう。

 特に当時、チャイナナイン(中共中央政治局常務委員9人)の中の党内序列ナンバー5だった李長春は莫言に祝電を送っている。李長春は当時、中共中央精神文明建設指導委員会の主任をしていた。つまり「イデオロギー」を管轄する中共中央のトップである。

 文学だから、という理由もあろうが、筆者の目には、これもまた奇妙に映った。

トゥユーユー氏の受賞に関しては?

 今般のトゥユーユー(屠○○、○は口偏に幼)氏のノーベル医学生理学賞の受賞に関しては、チャイナ・セブンの党内序列ナンバー2の李克強首相が中国国家中医薬管理局宛てに祝電を送り、また劉延東国務委員が中国科学協会を通して祝賀の意を表した。

 1930年生まれのトゥ氏(84歳)は、漢方薬によく用いられるキク科の植物からマラリアに効く「アルテミシニン」という化合物を発見しており、「マラリアの新規治療法に関する発見」が高く評価されて今般の受賞につながった。

 なんといっても、まさに中国の伝統である漢方薬の研究を通してノーベル賞を受賞したということは、たしかに中国にとっては自慢だろう。これぞ「特色ある社会主義国家」の成果であると、絶賛している。

 中国は「ノーベル賞など西洋の価値観による賞で、取るに足らない」と虚勢を張り、また「平和賞」に関しては受賞者を投獄するという暴挙に出ていた状況から、「ノーベル賞受賞を礼賛する」姿勢へと少しずつ変わりつつある。

 ただ、それも「思想弾圧」を前提としたものであって、「虚勢」が変わったという印象はあまり受けない。

賞金にフォーカスを当てている中国のネット

 中国の検索サイト「百度(Baidu)」でトゥユーユー氏の受賞に関して検索したところ、自動的にその賞金に関する項目が候補としてリストアップされた。そして「賞金を折半して46万ドル獲得」とある。つまり3人の受賞者のうち、アイルランド人(米国の大学)のウィリアム・キャンベル氏と日本の大村智氏が合わせて半分で、トゥユーユーが残りの半分をもらうという情報である。

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