最新記事

少数民族

ウイグル人なら射殺も辞さない中国に噛み付くトルコ

2015年8月28日(金)16時45分
楊海英(本誌コラムニスト)

シルクロードで民族改造

 直近でいうと7月半ばに中国東北部の瀋陽で地元の警察の部隊がウイグル人3人を射殺。6月には東トルキスタン西部のカシュガルで15人、3月にも7人を射殺と、たった5カ月で少なくとも25人ものウイグル人が命を奪われている。

 香港の中国人権民主化運動情報センターによると、2月中旬からの1カ月だけでも46人が射殺されたという。こうした間にも暴動は中国各地で起きているが、ほかの地域で漢民族が警察によって射殺されたとの報道はない。このような天と地ほどの差について、中国政府は合理的な説明を国際社会にしていない。

 経済的に豊かになれば、民族問題も宗教問題もすべては簡単に解決できる、と中国人は理解している。「西部大開発」や「一帯一路構想」を政府主導で推進することで、「貧しいウイグル人を裕福な中華民族の一員に改造できる」と盲信する。

 漢民族のようには政府に柔順にならないウイグル人を素直な「奴隷」に仕立て上げるには、人口の逆転が最も効果的と認識している。そのため、内地に住む漢民族の新疆への移住を奨励する政策も矢継ぎ早に打ち出される。

 例えば、内地では農村戸籍の者でも新疆に移民すれば、都市戸籍を与えるという。中国では都市戸籍と農村戸籍とでは、福祉の待遇面に大きな格差がある。ウイグル人固有の領土で都市住民になろうという野望を持つ漢民族が陸続と入植してきて、先住民の手からあらゆる権利を剥奪している。

 悲しいことに、日本や欧米の中国シンパたちは中国の高圧的な民族政策を黙認している。その点、トルコは異なる。「われわれはいかなる場合でもウイグル人と連帯する。同胞たちが弾圧されている事実に接し、トルコ国民は悲しんでいる」とトルコのチャブシオール外相は表明した。

 民族問題は決して中国の国内問題ではなく、歴然とした国際問題だ。

[2015年9月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 影響抑

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中