最新記事

領土問題

中国にらみスクランブル用戦闘機を配備、フィリピンが元米軍基地を再利用へ

2015年7月17日(金)17時36分

同基地にはFA50の飛行中隊のほか、戦闘航空団も本島北部の基地から移転される。また、スービック湾には海軍のフリゲート艦2隻も配備されるという。

2人はこうした措置の理由として、南シナ海に近いことや同基地を再利用する容易さを挙げた。

同基地は20年以上も基地として機能していなかったため、新軍事協定で米軍が利用できるフィリピン軍の施設8カ所には含まれていない。ただ、バティノ国防次官は米軍が同基地を利用できる可能性を示唆している。

最高裁で審理中の新軍事協定の判断は、数カ月以内に出される見通し。米国防総省は、米軍が利用可能なフィリピン軍施設に関する非公式協議があったとした上で、最高裁の判断が出るまではどのような計画も実行には移されないとしている。

戦略的な岩礁

安全保障の専門家は、スービック湾がスカボロー礁(中国名・黄岩島)からわずか270キロに位置していることに注目している。スカボロー礁をめぐっては、フィリピン海軍と3カ月にわたる対立の末、2012年に中国が実効支配した。

中国が一部に軍事施設も備えた人工島の建設を進める南沙(英語名スプラトリー)諸島は、スカボロー礁の遠く南西に位置する。いずれ中国がスカボロー礁に人工島を建設する日がやって来るかもしれない。

そうなれば、フィリピンが本島沖の排他的経済水域(EEZ)を守るのがますます困難になる恐れがあると、新アメリカ安全保障センターのパトリック・クローニン氏は指摘する。

「新しい韓国製の軽攻撃機なら、たった数分でスカボロー礁に到達できるだろう。海洋哨戒機やドローンも同域での中国の動きを絶え間なく伝えてくれるようになる。フィリピン空軍によるスービック基地の復活は賢明な防衛反応のように思える」

(Manuel Mogato記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)


120x28 Reuters.gif

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米連邦職員の団体交渉権剥奪を阻止、地裁が大統領令の

ビジネス

フジ・メディアHD、株主総会で取締役選任の会社提案

ビジネス

焦点:超長期国債「消却案」、年末にかけ再浮上も 歳

ワールド

米民主のNY市長予備選、左派が勝利へ クオモ氏敗北
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 4
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 9
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中