最新記事

核問題

イラン核協議、合意できても履行はもっと困難

今週末が交渉期限だが、米共和党は黙っていないし、イラン政府は信頼ならない

2015年7月8日(水)20時02分
エミリー・カデイ

難しい交渉 ウィーンでイラン核協議に臨むジョン・ケリー米国務長官(7月7日) Carlos Barria-REUTERS

 ウィーンで行われているイラン核協議は、交渉期限が7月10日に延長されてギリギリの攻防が続いている。欧米諸国は、イランの核開発を止めるために核施設への査察などを求め、イランは経済制裁の解除を求めている。だが、仮に合意に達したとしてもそれでめでたく終わりにはならないかもしれない。

 まず考えられるのは、米共和党の反発。とくに2016年大統領選に名乗りを挙げている候補者からは、非難の大合唱が起こるだろう。イランの核開発に対する監視が甘いとして、早くも合意の取り消しに言及したり、内容を大幅に後退させると公言する候補者もいる。

「私が大統領に選出されたら、就任初日の2017年1月20日に、イランとの合意を撤回する」と共和党候補の1人、ウィスコンシン州知事のスコット・ウォーカーは先週ラジオで語った。

 元フロリダ州知事の有力候補ジェブ・ブッシュも、ウォーカーほどではないが批判を強めている。

 保守系ウェブサイトに寄せた署名記事の中でブッシュは、「根本的に欠陥のある核合意によるダメージを修復するのは容易ではない」が、それでも合意の見直しは「アメリカの安全保障にとって不可欠だ」と主張した。

 現実には、新大統領が就任後すぐに合意を撤回するような確率は低い。一度締結した国際合意をひっくり返せば、外交上、財政上、そして安全保障上の痛手が大きいからだ。仮に本当に共和党の大統領が誕生したとしても、それは不可能だろう。

合意文書に明記されないグレーゾーンも多い

 核合意の行方を左右するもう1つの勢力は、もちろんイランだ。

 歴代大統領の顧問を務めたワシントン中近東政策研究所のデニス・ロスによれば、イランはこれまで、国際社会の限界を試すような挑発を何度も行ってきた。核問題については特にそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価は再び安定、現在のインフレ率は需給反映せず=F

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 9
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中