最新記事

環境

中国の大気汚染のうれしい「副作用」

都市部で発生するスモッグが、中国政府の地球温暖化対策の姿勢を一転させた

2015年3月9日(月)12時23分
ジョシュア・キーティング

呼吸困難 PM2・5問題は市民の健康だけでなく中国経済にも害を及ぼす(北京) Kim Kyung-Hoon-Reuters

 アメリカのバラク・オバマ大統領は14年11月、非常に大きな得点を稼いだ。APEC(アジア太平洋経済協力会議)で訪れていた中国で、国家主席と温室効果ガスの排出削減で合意したのだ。

 アメリカは温室効果ガスの排出を25年までに、05年と比べて26〜28%削減する方針を示した。これは従来目標の2倍のペースだ。さらに注目されたのは、中国が30年までのできるだけ早い時期に排出量を減少に転じさせる、と約束したことだ。

 期待外れな数字に思えたかもしれない。温室効果ガスの世界最大の排出国である中国が、あと15年も排出量を増やし続けるというのだから。それに合意を懐疑的にみる人々は、どのみち経済状況や人口動態の変化のために中国の排出量は自然に減少へ向かうと指摘する。

 しかし、中国が具体的な削減目標に合意したのは今回が初めて。その点は画期的だ。

 中国が環境のために経済成長を諦めることはないだろう、というのがこれまでの一般通念だった。となると今回、削減目標を設定したことは、他の途上国に対しても「排出削減を逃れられる国はない」というメッセージになる。特に、総量削減に応じようとしないインドのナレンドラ・モディ首相がどう反応するかは興味深い。

何週間も続いた煙霧がきっかけ

 中国の政府高官らは、排出削減についてしばらく前から検討していたとほのめかしている。中国は石炭消費量についても、静かに取り組みを始めている。

 少し前まで、中国は毎週のように1つか2つの石炭発電所を新たに稼働させていた。この石炭消費量の増加分が、02〜12年の世界におけるCO2排出増加分の半分近くを占めていた。

 しかし14年には、中国の石炭消費は減少したと思われる。多くの地域が野心的な削減目標を発表しており、例えば北京市は20年までに石炭利用をゼロにする計画だ。石炭利用の中止へと中国を駆り立てているものは何か?安価な天然ガスから再生可能エネルギーの価格下落まで、さまざまな要因がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中