最新記事

韓国

朝鮮半島38度線が「平和の公園」に?

2014年12月1日(月)12時19分
ジェフリー・ケイン

珍しい渡り鳥のすみか

 このプロジェクトの予算は302億ウォン(約31億円)。実行に移すには、北朝鮮と国連軍司令部の協力が必要だ。今のところ韓国議会は、この予算を全額認めてはいない。

 DMZの概念を変えようという試みは、これが初めてではない。李明博(イ・ミョンバク)前政権時代の12年には、DMZの一部が「平和と命の地区」と命名された。この呼び名を実際に使う人はほとんどいないが、その名にふさわしい光景はあちこちで目にできる。

 例えばDMZ東部の鉄原盆地では、珍しい種類の渡り鳥がかつての戦場の空を飛び交っている。「DMZでは争いも起こる。でも、あの戦争は私たちのために美しさも生み出した」と、湖にたたずむツルを指さして韓国兵が言った。

 韓国政府はDMZに工業団地の建設も検討中だ。「世界平和文化タウン」やエコパークを造る計画もある。北朝鮮側には04年に南北共同で開城工業団地が設置されたが、南北の緊張感が高まるたびに操業が停止されたり、効率が落ちたりする。

 緊急時に「平和公園」は役に立つのだろうか。昨年リークされた07年の会談の記録によると、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が提案した同様の計画を断っている。

「言葉に頼っても、所詮はレトリックにすぎない」と、釜山国立大学のロバート・ケリー教授(政治学)は言う。「DMZを『平和公園』と呼ぶのは、耳に心地いい嘘でしかない。北が本当に変わらない限りは」

From GlobalPost.com特約

[2014年11月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米共和党対中強硬派、華為への販売全面阻止を要求 イ

ビジネス

世界のワイン需要、27年ぶり低水準 価格高騰で

ワールド

米国務省のアラビア語報道官が辞任、ガザ政策に反対

ワールド

欧州委、ロシア産LNGの制裁検討 禁輸には踏み込ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中