最新記事

食品

究極の高級コーヒーが動物虐待の源に?

ネコのふんから「拾い出す」豆の人気が高まっているが、生産地には思わぬ「副作用」が

2014年9月22日(月)12時43分
アナ・バーナセク

独特の製法 コピ・ルアクはマレージャコウネコが食べたコーヒーの実の種子をふんの中から回収して作られる Ulet Ifansasti/Getty Images

 1950年代のアメリカでは、コーヒー1杯は10セントと相場が決まっていた。アメリカンコーヒーは当時、究極の「日用品」。どれも安価で、正直に言うとあまりおいしくなかった。

 だが現在では、コーヒーにも他のあらゆる製品と同じような「高級品」という選択肢がある。それも大量に出回っている一般的な商品に比べて、何倍もの値段がする代物だ。

 その代表格といえるのが、インドネシアのスマトラ島やバリ島、スラウェシ島、ジャワ島で生産されるコーヒー豆「コピ・ルアク」。ニューヨークの住宅街ウェストビレッジにある専門のカフェでは、この豆で入れたコーヒー1杯になんと30ドルという値段が付いている。ちなみに、近くのダンキンドーナツのコーヒーは1杯1・19ドルだ。

 コピ・ルアクが特別な理由は、その独特な製法にある。農園で栽培されているコーヒーの果実が野生のマレージャコウネコに食べられ、彼らの消化管に1〜2日間「滞在」。その後、消化されずにほぼそのまま排泄された種子をふんの中から回収し、洗浄・加工することで独特の風味を持った豆が作られる。

ネコに無理やり食べさせて生産

 動物の排泄物から取りだしたコーヒー豆だけに、誰もが喜んで飲みたがるわけではない。それでも1キロ当たり770ドル以上の高値が付くのは、言うまでもなく希少価値が高いからだ。

 だが需要が高まった今では、年間500トン近くが「人工的」に生産されているという。自然に生産される量の1000倍だ。ジャコウネコを捕獲して檻に入れ、無理やりコーヒーの実を食べさせて生産しているのだ。

 コピ・ルアクの人気の高まりが招いたこの現状に、専門家たちは懸念を抱いている。90年代前半、最初にコピ・ルアクに注目したコーヒートレーダーのアントニー・ワイルドは、「本物」のコピ・ルアクを認証するキャンペーンを立ち上げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中