最新記事

鉱物資源

中国を凌駕する北朝鮮のレアアース

レアアース「独占」で幅を利かせている中国の6倍ものレアアース資源が北朝鮮に眠っている?

2014年2月26日(水)14時33分
ザカリー・ケック

採掘場(中国)。北朝鮮が中国に取って代わる日は来るか Reuters

 世界最大のレアアース鉱床が北朝鮮に──。昨年12月、北朝鮮で地質調査を行った英企業はそんな発表をした。

 英領バージン諸島を拠点とするSREミネラルズ社によれば、平壌の西北に位置する鉱床に推定2億1600万トンのレアアースが眠っている可能性がある。
全世界で確認されているレアアース埋蔵量(推定1億1000万トン)の約2倍だ。

 レアアースは携帯電話から誘導ミサイルまで多くの最先端テクノロジーに使われている。極めて希少というわけではないが、採掘規制が欧米ほど厳しくない中国が現在、シェアの90%以上を占めている。中国はこの独占に近い状態を利用して、政治的に対立する国を牽制してきた。

 北朝鮮に大量のレアアースをはじめとする鉱物資源が眠っている可能性があることは以前から知られていたが、SREミネラルズ社の試算は従来の予想を大きく上回る。同社の読みどおりなら北朝鮮のレアアース資源は中国の約6倍で、理論上は中国の独占に終止符を打てる。多くの先進国と違って、北朝鮮では環境規制や労働条件が採掘の足かせになる心配もない。

 とはいうものの、重大な障害が残る。レアアースの採掘と外国市場への出荷だ。採掘・出荷プロセスに関する技術的問題に加えて、北朝鮮の政治環境が同国でのビジネスを非常に難しくしており、そのせいで北朝鮮政府は豊かな鉱物資源を十分活用できていない。

 SREミネラルズ社は既に北朝鮮との合弁会社を設立。英領バージン諸島を拠点にするのは北朝鮮に対する経済制裁を回避するのが狙いだろう。

 合弁会社は25年契約で定州鉱床を開発する予定で、精製工場も設立すると報じられている。しかし北朝鮮は外国企業との長期契約を突然打ち切ってきた「前科」がある。単なる気まぐれの場合もあれば、北朝鮮と企業の本国との政治的関係の変化が原因になったこともある。

 90年代の韓国の太陽政策(対北朝鮮融和政策)がいい例だ。当時、韓国の鉱業各社は北朝鮮に巨額の投資をしたが、その後南北関係が悪化して損失を被った。外国企業が北朝鮮に投資をした後で締め出されるケースもある。中国の鉱業大手、西洋集団は鉱山開発と人材育成のため北朝鮮に4000万ドルを投資したが、北朝鮮側が必要な技術を習得すると追い出されたという。

From thediplomat.com

[2014年2月25日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、米早期利下げの思惑が支援 ハイテク

ワールド

高市首相、放漫財政を否定 為替は「状況見て必要な手

ワールド

マクロスコープ:米中接近で揺れる高市外交、「こんな

ビジネス

英中銀のQT、国債利回りを想定以上に押し上げ=経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中