最新記事

異常気象

欧米の大雪は北極の温暖化のせいだ

北極の気温上昇が原因とみられるだけに、「今年だけの異常気象」では終わりそうもない

2014年2月18日(火)17時43分
フィリップ・ロス

先週も米東部・南部は寒波に見舞われ、ニューヨークでは非常事態宣言も Zoran Milich-Reuters

 アメリカやヨーロッパなどを襲っている寒波や大雪は、まだまだ止みそうもない。困ったことに、この厳しい冬の天候は長期にわたるトレンドの始まりだという。

 北大西洋のジェット気流の変化で、より寒くて長い冬が定着する――科学者たちはその仕組みを、世界の天候パターンに関する研究の力を借りて理解しつつある。

 シカゴで先日開催されたアメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会で発表された研究によれば、北ヨーロッパと北アメリカの上空を流れるジェット気流はより長く、より蛇行するようになっている。北半球を西から東へ流れるジェット気流は、熱帯地方から北極に向かう温かい空気と、北極から熱帯へと向かう冷たい空気の境界に発生する。

 ジェット気流の強さは、熱帯と北極の気温の差に比例する。差があまりなければ、ジェット気流は弱く蛇行しやすい。北極では今、ほかの地域に比べて2、3倍の速度で気温が上昇しており、北極と熱帯との気温差は小さくなっている。これは、北アメリカとヨーロッパにおける長い冬を意味する。

 北極が温かくなれば、寒波はさらに南に、暖かい空気はさらに北に届くようになる。蛇行したジェット気流のくびれはなかなか移動せず、北米やヨーロッパの上空では厳しい冬の天気が何週間も続くことになる。

さらに南方まで寒波が襲うように

 「北極とそれより緯度の低い地域の気温差は、ジェット気流の発生源の1つだ。それは風を作り出す」と、ラトガーズ大学の海洋・沿岸科学研究所のジェニファー・フランシス教授は述べている。「北極は急速に温暖化しているので気温差は小さくなり、ジェット気流が生まれにくくなっている。そうなるとジェット気流はしばらくの間、同じ場所にとどまる。12月と1月には、非常に蛇行したパターンが出現した」

 NASA(米航空宇宙局)によれば北極の気温は81年以降、10年ごとに平均約1.2度上昇している。「81年〜01年の北極における気温上昇は、過去100年間の北極の気温上昇の8倍の速度で進行している」と、NASAの科学者は指摘する。北極が温暖化しているのは、これまで太陽光を反射していた海氷が溶けているために、海が熱を吸収しているからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中