最新記事

アフリカ

コンゴを引き裂く2つの殺戮部隊

反政府武装勢力M23と政府軍はどちらも人道犯罪にまみれている。戦闘に追われて逃げるコンゴ東部の住民にあるのは絶望だけ

2012年11月27日(火)17時57分
トリスタン・マコネル

戦火に追われて 国連平和維持部隊は反政府勢力の侵攻も防げなければ、戦闘から住民を守ることもできない Jonny Hogg-Ruters

 中央アフリカのコンゴ(旧ザイール)で、再び紛争の火種がくすぶっている。

 コンゴ東部の都市サケの郊外では先週末、国際赤十字のメンバーが死体を回収していた。既に血まみれになった担架に次々と死体を乗せ、埋葬場所まで運ぶ。死亡者の親戚縁者に息子や兄弟、父親の死を告知できるよう、作業にあたる人々は死体からIDカードを取り外していた。

 先週、反政府武装勢力のM23(3月23日運動)が政府軍を撃退した戦闘で、サケの住人数万人が避難を余儀なくされた。その後2日間、死体は道路脇に放置されたままだった。この攻撃以降、前線はしばらく安定している。周辺国の政府は、コンゴ東部の紛争を大規模な内戦に拡大させないよう、協議を始めた。

 同盟国の首脳から圧力を受けたジョセフ・カビラ大統領は、M23と交渉する意向を示した。軍部を離反した将校が率いるM23は、ルワンダの支援を受けていると見られ、今年4月に戦闘を開始した。

 コンゴ政府はM23が東部北キブ州の州都ゴマからまず撤退するよう要求しているが、M23は拒否した。M23の政治部門トップのジャンマリー・ルニガ・ルゲレロは、いかなる撤退も「交渉の結果」で、「前提条件」ではないと主張している。M23の軍事部門トップのスルタニ・マケンガは今週隣国ウガンダの首都カンパラを訪問し、ウガンダの軍部トップと会談した。

 和平交渉はぎこちなく始まる一方で、今回の戦闘が引き金となった恐怖は収束する気配を見せていない。人道危機は増大している。

 M23の侵攻地帯の最前線にあたるサケ南方の村シャサは、表面上は静寂が支配していた。政府側に忠誠を誓う民兵組織マイマイのメンバーが、わずか数百メートルしか離れていない場所に陣地を置いている。政府軍の戦車のキャタピラはロケット弾で吹き飛ばされ、毎朝散発的な銃撃戦が起きる。

政府軍兵士はレイプや略奪に走る

 反政府勢力の最前線から数キロしか離れていない街キロチェでは、住民が夜間の安全を病院に求めて眠りについていた。戦闘が再び始まるかもしれないし、退却途中の政府軍が不安に駆られてレイプや略奪に走るかもしれないからだ。

「これが初めてではない」と、25歳のデューメルセ・サルコンボは言う。「皆泣き疲れた。まったく信じがたい出来事だ」

 M23に撃退された政府軍の兵士が集まる街ミノバにたどり着いた数少ないジャーナリストは、悲惨な状態だと証言している。昼過ぎには酔っぱらった兵士が、好き放題レイプや略奪を行っている。

 政府軍は長らく、腐敗した強欲な集団と見られている。人権侵害は数限りなくあり、その種類は多岐に及ぶ。つい先週には将軍のアミシが、政府側の武器を自分の部下が戦う相手の反政府勢力に売り渡していたという容疑で罷免された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏のEV支援廃止、競合社の方が打撃大きい=

ワールド

原油先物は上昇、米原油在庫減少で 中東の停戦期待で

ビジネス

製造業PMI7月は49.2に悪化、サービス業は50

ビジネス

三菱自株が10%超安、4─6月期決算で 「円安加味
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 2
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 3
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 6
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 7
    中国海軍、ロシアの手引きでNATOの海を堂々と正面突…
  • 8
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 9
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 10
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 1
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 2
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 3
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 4
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 5
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…
  • 6
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 7
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 8
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 9
    トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親…
  • 10
    AI生成の「ネコ顔の花」に騙される人が続出!? ニ…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 6
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 9
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 10
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中