最新記事

中南米

元祖デフォルト国家アルゼンチンの受難

経済無策が招いた景気後退とインフレに抗議する大規模ストで公共サービスはマヒ状態

2012年11月21日(水)16時29分
タリア・ラルフ

不信任 昨年の大統領選で圧勝したフェルナンデスの人気も急降下 Enrique Marcarian-Reuters

 欧州債務危機と世界的な景気減速の影響を受け、アルゼンチン経済が急速に経済が悪化している。11月20日には、国内の2つの労働組合が所得減税と各種手当の増額を求めて全国的なストに突入した。

 労働総連盟(CGT)とアルゼンチン労働者セントラル(CTA)は、合計50万人が加盟する労働組合。首都ブエノスアイレスなど全国の都市で、労働をほぼ完全に停止する24時間のストに踏み切った。2001年の債務不履行(デフォルト)宣言以降で最大の規模だ。

 ブエノスアイレス・ヘラルド紙の取材に対し、CTAの統括リーダー、パブロ・ミチェリは「全国的なストについて、その意味が正しく理解されるべきだ。これはストなのだ」と語った。

「物事がどれほどひどくなっているか、家で愚痴を言うだけではすまない状態になった。行動を起こし、自分たちの権利を主張しなければならない状態に追い込まれていることを分かってほしい」

 ストには空港職員やトラック運転手、電車の車掌も参加している。そのため、国内線フライトのキャンセルや、バス・電車の運休、多くの幹線道路の封鎖などを招いた。さらに銀行は休業し、通りにはゴミが放置され、多くの公立病院が急患以外の診察を停止した。

 今回のストが意味するのは、昨年の大統領選で圧勝し、再選を果たした左派クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領への不満の高まりだと、米ロサンゼルス・タイムズ紙は分析する。とはいえ、今年8月の調査の時点で、すでに大統領に肯定的な見方をしている回答者は35.4%しかいなかった。

 国民の怒りの矛先は高いインフレ率や治安悪化、役人の汚職、外貨両替えを規制する政策などに向けられている。ストの直前、11月8日にはこうした問題に抗議するデモが行われたばかりだった。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中