最新記事

内戦

シリア、反政府勢力を組織的に拷問

内戦状態に陥ったシリアでは政府が設置した拷問施設の詳しい内情が明らかに

2012年7月4日(水)17時55分
アマンダ・モロー

告発 元収容者らの証言に基づいてスケッチ画や施設の位置も公開された

 昨年春から、民主化を求める反政府活動家と政府当局の血みどろの対立が続いているシリア。死者の数が1万人に達したとの推定もあるなか、政府が組織的な拷問行為によって反政府勢力を痛めつけている可能性が浮上した。

 人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは7月3日、独自の調査に基づいて拷問の詳細な実態を告発した。発表によれば、シリア国内には27カ所もの拷問施設があり、収容者は組織的な暴力にさらされているという。警棒やケーブルなどで殴打され、酸で体を焼かれ、性的な暴力を受け、指のつめを剥ぎ取られる──。

 元収容者や逃亡した治安部隊の隊員など200人以上の証言によって明らかになった拷問の手口は、実に20種類以上。拷問施設の詳細な位置を示す地図やインタビュー映像、拷問手法を描いたスケッチなども公表された。収容者の数は数万人ともいわれ、軍事情報部、政治治安局、総合情報局、空軍情報部など政府内のさまざまな部局が関与しているという。

「人道に対する罪」で裁けるか

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、一連の調査結果はシリア政府が「人道に対する罪」にあたる拷問や虐待を公然と行っている証拠だと主張。国連安全保障理事会に対し、この問題を国際刑事裁判所に付託するよう求めた。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの緊急事態リサーチャー、オーレ・ソルバンは、拷問施設の「位置を公開して拷問手法を描写し、責任者を特定することで、この恐るべき犯罪に手を染めた人々に『いずれ罪を償う日が来る』というメッセージを送っている」と語る。

 40日間に渡って独房に入れられたという西部の都市ラタキア出身の反政府活動家タリクは、CNNテレビの取材に対し、自分は「デュラブ」と呼ばれる拷問を受けたと語った。車のタイヤの中に両足と頭を押し込められて殴られるというものだ。さらに、板にくくり付けられて殴られる拷問「バサット・アルレー」も受けたという。

「裸にされて冷たい水を浴びせかけから、小便をかけられることもあった。彼らはどうすれば効果的か熟知していた」

 6月に北西部のイドリブで拘束されたという別の31歳の男性は、裸にさせられて指をペンチで締め付けられ、ホチキスで指や胸、耳などに穴を開けられたという。「奴らは2本のワイヤを車のバッテリーにつないで、私に電気ショックを与えた。スタンガンを性器に当てて電流を流されたことも2度あった。もう家族には二度と会えないと思った。そんな拷問が3日間で3回行われた」


■ヒューマン・ライツ・ウオッチの告発ビデオ(英語字幕付き)

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラックフライデーの米オンライン売上高は過去最高、

ワールド

北朝鮮の金総書記、空軍の核戦争抑止力を強調 式典で

ビジネス

中国製造業PMI、11月は8カ月連続50割れ 非製

ワールド

米・ウクライナ、30日にフロリダで会談 和平案協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中