最新記事

スキャンダル

IMFセックス疑惑、妻が語る意外な本音

性的暴行疑惑で転落した元IMF専務理事ドミニク・ストロスカーンの妻アン・シンクレアが、8カ月の沈黙を破って激白

2012年1月23日(月)16時50分
エリック・ペープ(パリ)

夫婦愛? 性的暴行疑惑で転落した夫ストロスカーン(右)を、シンクレアは支え続けてきた(写真は2011年7月、ニューヨーク) Lucas Jackson-Reuters

 屈辱と世間の好奇の目にさらされながらも、アン・シンクレアは沈黙を貫いてきた。夫でIMF(国際通貨基金)専務理事だったドミニク・ストロスカーンのスキャンダルが浮上したのは昨年5月。マンハッタンのホテルのスイートルームで32歳の女性従業員に性的暴行を加えたとして、逮捕・訴追されたのだ(後に起訴は取り下げられた)。

 以後8カ月にわたり、シンクレア(フランスでは美貌と知性を兼ね備えた著名テレビジャーナリストとして知られる)は1度も取材に答えることなく過ごしてきた。

 そんなシンクレアがこのほど、ジャーナリズムの世界に戻ることを決意した。アメリカのニュースサイト、ハフィントン・ポストのフランス版が1月23日からスタートするにあたり、その編集長を務めることになったのだ。復帰を前に、シンクレアはついに沈黙を破った。フランスのファッション誌「エル」のインタビューでは、夫のスキャンダルを始め、さまざまなことについて語っている。

 ベテランのジャーナリストであるシンクレアは、なぜ夫のスキャンダルがここまで注目を集めたのか、十分理解している。それでも、容赦ないメディアからの攻撃を受けた自分たちも「暴行」されたと、彼女は語った。「私生活を徹底的に調べ上げられ、世界中にさらされるのはこんなにつらいものかと思い知った」とシンクレアは語る。

「夫の事件でも報道する」

 驚くべきは、ニューヨークのメディアがタブロイド紙さながらに過熱報道を繰り広げたにも関わらず、シンクレアがアメリカのジャーナリズムを称賛したことだ。「アメリカにも低俗な新聞はあるし、プライバシーの侵害だってある。でも主要メディアはレベルが高く、正確で仕事熱心だ」
 
 とりわけ米ニューヨーカー誌は、25人の「事実チェック要員」を雇って、記事中に出てくるセーターの色まで正確に確認していたと褒めちぎった。それにひきかえ、フランスのメディアは「怠惰で、鋭さと正確さに欠けている」と言う。

 夫がIMFの職を失い、政界でつまずくようなことがなければ、自分が今回のハフィントン・ポストの仕事に就くこともなかっただろう――シンクレアはそう語る。

 しかし今後、例えばフランスの高級ホテルでの買春パーティーにストロスカーンの関与が疑われている件について記事で追及すべきだ、と部下が提案してきたらどうする? 

 そう問われると、シンクレアはどんな話題でも取り上げるつもりだと答えた。「その場合、私が記事を書く、とは言わないけれど......できる限りプロフェッショナルなやり方で報道する」

 シンクレアがなぜ夫を擁護するのか、多くの女性が理解に苦しんでいるという質問には、こう答えた。「申し訳ないけど、それは彼女たちの問題だわ! どう考えるかはその人の自由。夫婦の間に何が起きているかなんて、外からは見えないものでしょう。私の生き方を否定する権利は誰にもない」

 インタビューの最後は、こんな質問で締めくくられた。今も夫を愛している? 彼女の答えは――「あなたには関係ないでしょ!」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中