最新記事

抵抗

中国当局もコントロール不能の漁村デモ

役場職員が村を捨てて逃亡するほど激化した暴動は、中国の抗議デモの転換点になるのか

2011年12月16日(金)15時13分
キャスリーン・マクラフリン

混沌へ 拘束中に死亡した男性のために黙祷をささげる住民たち(12月13日) Reuters

 中国広東省の小さな漁村、烏坎(ウーカン)で地元政府に対する抗議デモが激化している。果たしてこのデモは中国各地で頻発している抗議運動の重要な転換点となるのか?

 ならないかもしれない。だがこの抗議デモは、政府にとっても活動家にとっても注目すべき事例だ。暴動が拡大し、地元政府の職員が村から逃げ出したとまで伝えられるからだ。
 
 中国で大規模な暴動が起きるのは珍しいことではない。この5年間、当局は公式な数字を発表していないが、中国全土で毎年約18万件の「大規模な事件」が発生しているといわれる。

 ここでいう「大規模な事件」とは、デモ活動や集会など市民が集まって地元政府に抗議の声を上げること。よくあるのが政府による土地の接収とそれに伴う強制移住に対する抗議だ。また環境汚染や労働賃金の問題も抗議活動の大きな要因になる。

 烏坎では土地収用の補償が十分ではないとして、住民らが3カ月前から抗議活動を開始。今週、警察に拘束された42歳の男性が死亡したのを機に、緊張は一気に高まった。警察は死因を心臓発作としているが、男性の家族は拘束中に拷問されたと主張している。

 さらに直近の動きとしては、デモの激化を受けて地元政府の職員が村を捨てて逃げ出し、住民2万人の村が混沌状態に陥りつつある。住民たちは村に食料が入ってこないよう警察が止めていると怒りの声を上げている。

 とはいえ過去の事例から、こうした無法状態や反政府運動はそう長くは続かないと言えるだろう。今年起きた何件かの労働ストライキやその他の暴動でも中央政府が民兵を動員して鎮圧した。

 政府は既に国内随一のミニブログサイト新浪微博(シンランウェイボー)で「烏坎」を検索できないよう検閲している。烏坎の暴動にそれだけ敏感になっているということだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、対ロ制裁第18弾で合意 石油・エネ産業へさら

ビジネス

日経平均は小反落、朝高後は参院選を前に持ち高調整

ワールド

インドネシア、米との貿易協定で詳細や適用除外なお交

ワールド

中国人民銀総裁、BofA幹部と会談 経済・金融情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 5
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 6
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中