最新記事

動物

ゲイのペンギンカップルを引き裂くな

仲睦まじいオスのペンギン2羽をトロント動物園が別れさせたというニュースに世界中から非難が殺到

2011年11月11日(金)14時59分

ゲイ差別? 仲を引き裂かれたペドロ(右)とバディー(11月8日) Mark Blinch-Reuters

 カナダのトロント動物園が「ゲイのペンギンカップル」の仲を引き裂いた――そんなニュースが世界を駆けめぐり、非難の嵐を巻き起こしている。 

 悲しい別離を強いられたのは、絶滅危惧種に指定されているケープペンギンのバディーとペドロ。カナダのグローブ・アンド・メール紙によれば、このオス2羽は以前、米ペンシルベニア州ピッツバーグの国立鳥園にいた頃に深い絆を築いたという。

 トロント動物園に引っ越した後も仲の良さは変わらず、互いに求愛や交尾のしぐささえ見せていたことから「ゲイのペンギン」と呼ばれるようになった(動物園の飼育員はバディーとペドロが性的に引かれ合っているとは限らないとしている)。

同性愛者への蔑視に満ちた決断

 一方トロント動物園のジョー・トルジョック代表は、「これは複雑な問題だが、彼らは何らかの愛情関係にあるようだ」とトロント・スター紙に語った。

 動物園がバディーとペドロを別れさせたのは、この絶滅危機種を繁殖して遺伝子を残すため。しかしこの決断は世界の猛反発を招く羽目になったと、グローブ・アンド・メール紙は報じている。


 米テレビ司会者のジミー・キンメルは「ブロークバック・マウンテン」ならぬ「ブロークバック・アイスバーグ(氷山)」だと品のないジョークを飛ばした。しかし世界から集まる声の多くは、動物園を激しく非難するものだ。

 アンフェアで心の痛む行為だとする声がある一方で、動物園はバディーとペドロに生殖だけが目的の昔ながらの「セックスマシン」になるよう強要していると非難する声もある。


 今回の一件は差別的だと指摘する声も上がっている。オンラインのニュースメディアであるゴーカーは、動物園の決断は「悪質で同性愛者への偏見に満ちている」としている。

 トロント動物園の職員トム・メイソンはナショナル・ポスト紙に対し、動物園としては絶滅の危機に瀕するケープペンギンを守るためにバディーとペドロにメスとの交尾を促さなければならないと語った。「もし彼らの遺伝子が貴重でなければ、やりたいようにさせている」

 メスと交尾に成功しさえすれば、バディーとペドロが寄りを戻してもかまわないという。しかし一度引き裂かれた愛が、元に戻るとは限らない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米税務事務所アンダーセン、上場で時価総額17.5億

ビジネス

ドイツの企業経営破綻、25年は前年比8.3%増で1

ワールド

白人至上主義は南アの主権を脅かす=ラマポーザ大統領

ワールド

タイ、領内のカンボジア軍排除へ作戦開始 国境沿いで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 10
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中