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IMFセックス疑惑のメイドが独占激白
【第3回】発情したチンパンジー

IMF前専務理事ストロスカーンを性的暴行容疑で訴えた客室係が本誌だけに語った事件の一部始終

2011年7月27日(水)19時24分
クリストファー・ディッキー、ジョン・ソロモン

 それ以上に確かなのは、ホテルを5月14日の午後12時28分にチェックアウトしてから、ストロスカーンがコロンビア大学で学んでいる末娘のカミーユと昼食に出かけたことだ。そのレストランから彼は、パリ行きのエールフランス23便に乗るため、ケネディ国際空港へ向かった。翌日にはドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談することになっていた。

 だが搭乗を待つ間に、ストロスカーンはIMF用の携帯電話がないことに気付いた。他の携帯電話で彼はソフィテルホテルに電話し、スイートルームに忘れていなかったかどうか問い合わせた。

 その時すでにホテルの現場にいた警察は、ホテル従業員に「あります」と答えるように指示(実際には部屋には携帯電話はなかった)。どこに届ければいいかと尋ねさせた。

 エールフランスのターミナルで、第4ゲートだ、とストロスカーンは言った。離陸前に大急ぎでケネディ国際空港に来てくれ、と。

 そしてホテル従業員の代わりに、港湾管理委員会が通知を受けて駆けつけ、飛行機がゲートを離れる寸前にストロスカーンを連行した。「ニューヨーク市警(NYPD)がホテルでの一件についてあなたと話があります」と1人が告げた。

 ストロスカーンがマンハッタンのハーレムにある特捜部の取調室で苦しい時間を過ごしている間に、ナフィサトウ・ディアロは診察のため病院に連れて行かれた。それから警察と共にホテルに戻り、現場検証に立ち会った。彼女がどこに立って、どこで倒れ、どこで唾を吐いたか、警察官にさし示した。

 ダラダラと時間が過ぎるにつれて、ディアロは家に1人でいる娘のことが心配でたまらなくなった。午前3時にやっと、警察はブロンクスの自宅に彼女を帰してくれた。ディアロも娘も眠れなかった。「娘はとてもおびえていた」とディアロは振り返る。

仏大統領を狙うほどの大物だなんて

 だがディアロは朝のニュースを見て驚愕することになる。「7チャンネルを見たら、あの男の正体が報道されていた。フランスの次期大統領になるような男だ、と。私は殺されるのではないかと思った」

 報道陣が電話番号を嗅ぎつけ、自宅の電話が次々と鳴り出した。ドアの外で待ち構える記者もいた。ディアロは娘を起こし、荷物をまとめて親戚の家に行く用意をするように言った。

 今日に至るまで、2806号室のスイートルームで何が起こったのか、ストロスカーン自身の口からは何も明らかにされていない。逮捕以降、ストロスカーンは彼の雇った熟練弁護士を盾にして身を隠し続けてきた。できる限り事件の詳細が公にならないよう努めてきた。

 彼の弁護士ウィリラム・テイラーは、本誌にこう語った。「腹が立ったのは、被害者にペラペラとしゃべらせて検察に圧力をかけようとする動きだ。これは根本的に間違っている」

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