イラン戦争でLNG需給激変、アジア新興国の需要抑制鮮明に
Emily Chow Marwa Rashad
[シンガポール/ロンドン 26日 ロイター] - イラン戦争により液化天然ガス(LNG)の世界需給が大きく揺らいでいる。価格高騰に加え、主要供給国カタールの輸出インフラ損傷や新規供給の遅れ懸念から、価格に敏感なアジアの需要見通しに不透明感が強まっている。
戦争前は、米国やカタールの新規設備稼働を背景に、世界のLNG供給は今年、最大で10%増の4億6000万─4億8400万トンに拡大し、需要も同様に伸びると見込まれていた。
しかし、イランによるホルムズ海峡の封鎖(世界のLNG輸送の20%が通過)や、カタールの液化設備損傷(年間1280万トンが3─5年停止)を受け、S&Pグローバル・エナジー、ICIS、ケプラー、ライスタッド・エナジーなどの調査会社は、供給見通しを最大3500万トン引き下げた。
これは約500隻分のLNG輸送に相当し、日本の年間輸入量の半分超、あるいはバングラデシュの5年分に匹敵する。
S&Pグローバル・エナジーのルシアン・マルバーグ氏は「今回のガス価格危機により、各国はわれわれが従来想定していたペースでのガス需要拡大を再考する可能性があり、需要の伸びは戦争前の予測を下回る」と指摘する。
同社は今年、カタールとアラブ首長国連邦(UAE)からの輸出が3300万トン減少すると予測。さらに、カタールのノースフィールド拡張の遅延やADNOCのルワイスLNGプロジェクトの遅延により、2027─29年も年間1900万トンの供給減を見込む。
<アジア価格、許容水準を大幅上回る>
供給ショックを受け、アジアのLNG価格は2月28日の戦争開始以降、143%上昇。ロシアのウクライナ侵攻に続く、過去4年で2度目の急騰となった。
現在は100万BTU当たり25.30ドルと3年超ぶりの高値圏にあり、新興国需要が伸びる目安とされる10ドルを大きく上回る。価格は27年までこの水準を上回るとみられている。
ラボバンクは今年の平均価格を16.62ドル、来年を13.60ドルと予想。UBSは今年23.60ドル、来年14.50ドルへと見通しを引き上げた。
ケプラーのローラ・ペイジ氏は「短期的には価格上昇と南アジアでの需要破壊により市場が調整される」と述べた。
<南・東南アジアで産業需要が縮小>
カタールのLNG供給の約80%はアジア向け。バングラデシュやインドなど価格に敏感な国々は、代替調達や石炭・国内ガスへの転換を進めている。
カタールへの依存度が高いパキスタンでは週4日勤務制を導入してエネルギー制限を行っているほか、肥料や繊維などエネルギー集約型産業で需要が減少している。
パキスタン・ガスポートのイクバル・アハメド最高経営責任者(CEO)は「需要破壊が進んでいる」と語る。インドでも石化やセラミックの生産に影響が出ている。
世界最大のLNG輸出国である米国は、輸出設備がほぼフル稼働で長期契約に縛られており、不足分を補う余地は小さい。
エネルギー・フラックス・ニュースのセブ・ケネディ氏は「失われた供給を容易に代替することは不可能で、需給ギャップは埋まらない。依存国にとってエネルギー安全保障への重大な打撃だ」と指摘する。
シンクタンク、IEEFAのLNGリサーチ責任者サム・レイノルズ氏によると、今回の危機を契機に、アジアでは国内エネルギーや再生可能エネルギーへの転換が進み、LNG需要が恒久的に減少する可能性もある。
<北東アジアは影響限定的>
最大の輸入国である中国は、以前からLNGへの依存を軽減させてきた。国内のガス生産拡大やロシアからのパイプライン「シベリアの力」による供給増、さらに再生可能エネルギーへのシフトにより、カタールからの供給(中国の年間消費量の約6%)が途絶えても、その影響は相殺できる見通しだ。
また、日本や韓国といった輸入大国は、代替となる国内資源が乏しいことなどから、調達計画に大きな変更はないとみられる。





