最新記事

アフガニスタン

オマル殺害説にうごめく深謀遠慮

最高指導者死亡の報道でタリバンの内部に動揺が広がったが、実はアメリカもオマルを必要としている

2011年6月2日(木)10時45分
サミ・ユサフザイ(イスラマバード)、ロン・モロー(イスラマバード支局長)

謎だらけの男 オマルは01年、タリバン政権崩壊の際に山岳地帯へ脱出して以来、公の場に現れていない

 アフガニスタンの情報当局が流した噂は、最初から眉唾ものだった。だが同時に、この話は大きな破壊力を秘めた宣伝工作でもあった。

 アフガニスタンのテレビ局が匿名の国家保安局筋の話として、反政府勢力タリバンの最高指導者ムハマド・オマル師が射殺されたと報じると、このニュースはタリバン内部にも瞬く間に広まった。この「事件」はオマルがパキスタン側の国境の都市クエッタから、無法地帯と化している北ワジリスタンの新たな隠れ家に移動している最中に起きたとされる。

 アメリカやNATO、欧米の外交筋がその死に懐疑的な見方を示すと、国家保安局はすぐにトーンを弱め、オマルはクエッタの隠れ家から「姿を消した」と言い換えた。

 それでも効果的な宣伝工作が行われた場合、この手の偽情報は独り歩きを始めるものだ。謎の多い隻眼の指導者オマルは01年11月、タリバン政権が崩壊した際にオートバイで山岳地帯へ脱出して以来、公の場に姿を現していない。

 タリバン内部の情報筋は、強硬派のゲリラ司令官やイスラム戦士にも動揺が広がっていると語る。タリバンのある情報工作員によると、このニュースを聞いた司令官たちは一斉に携帯電話で連絡を取り合い、オマルの確実な消息を知ろうとした。

 それも無理はない。過去10年間、タリバンの内部でもオマルが生きているという証拠をつかんだ司令官やイスラム戦士はほとんどいない。一部の司令官は、オマルの肉声とされるカセットテープの音声を聞いたと主張しているが、具体的な物証や裏付けはないようだ。

 そのため今回のオマル死亡説や行方不明説は、多くのタリバン兵が心の中で何年も抱いてきた疑念をさらに膨らませることになった。有力な前線司令官たちに近いタリバンの兵站担当者によると、彼らはオマルの声を聞きたいと切望している。

「(オマルは)なぜ肉声を届けてくれないのか、大きな謎だ」と、この兵站担当者はいぶかしむ。「誰もが声を聞きたくてたまらないのに」...本文続く

──ここから先は6月1日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年6月8日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

特集は創刊25周年記念第4弾「日本経済 再起動への道」。震災復興は困難だが、長年の構造問題を強制終了するチャンス。「失われた20年」を挽回し、新たな日本を創造する処方箋とは。特別リポート「被災地を救う本当の復興特需」の他、有力エコノミストが直言。
■震災復興と新生ニッポン(池田信夫)
■日本をダメにした「現状維持型経済」からの脱却(ピーター・タスカ)
■震災列島を覆う世界経済の津波に勝て(ビル・エモット)

他にも
■オマル殺害説にうごめく深謀遠慮
■IMFトップを捕らえた刑事の苦悩
■続編ブームが映画を滅ぼす? など
<最新号の目次はこちら

[2011年6月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国AI研究者、米国との技術格差縮小可能と指摘 課

ビジネス

25年世界スマホ出荷2%増、アップルがシェア20%

ビジネス

26年の原油価格は下落へ、供給増で=ゴールドマン

ビジネス

FRB議長に召喚状、政権の圧力未踏の領域に 市場に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 10
    筋力はなぜパワーを必要としないのか?...動きを変え…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中