最新記事

人権

遂に「鳥の巣」作者まで拘束した中国政府

経済・外交で重要性が増し人権は二の次になったのを幸いに、中国はゲームのルールを変えようとしている

2011年4月6日(水)17時58分
キャスリーン・マクラフリン

自由の象徴 艾の上海のスタジオが政府に取り壊されたことへの抗議活動で掲げられた彼のポスター(昨年11月) Carlos Barria-Reuters

 国際的に有名な中国の現代アーティスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)が北京空港で拘束されてから3日が経った。欧米各国の政府は、艾の釈放と反体制派の法律に基づかない身柄拘束をやめるよう中国政府に求めている。

 艾の関係者によると、3日午前に北京空港の税関で身柄を拘束されてから、艾本人と連絡が取れないという。艾は台湾での展覧会の準備のため出国しようとしていたところだった。艾は最近、ドイツの新聞に中国では反体制派の発言に対する取り締まりが厳しくなり、自由に活動できなくなってきているのでベルリンに新しいスタジオを建設する予定だ、と語っていた。

 艾の拘束から数時間も経たないうちに、警察は北京市北部にある艾のスタジオを捜索し、助手たちを拘束。パソコンを押収し、付近一帯を立ち入り禁止にした。

反体制派の弾圧が中国全土に広がっている

 このところ中国では政権に批判的な人々が逮捕・拘束されたり、行方不明になるケースが続いている。艾の拘束はその最新の事例に過ぎない。中国の公安当局は「ジャスミン革命」の呼び掛けへの対応に追われ、中東や北アフリカで起きた市民の反政府デモや暴動に神経を尖らせている。

 香港の人権擁護団体「中国人権守護者」は、ここ数週間の「身柄拘束・行方不明者マップ」を公表した。これを見れば状況がどれだけひどいかがよくわかる。

 積極的に発言するだけでなく、ソーシャルメディアの熱心なユーザーでもあった艾は、ツイッターを通じて自由な発言を求める人々が弾圧されていることを記録にとどめてきた。艾は口を封じられた最初の人物ではないが、国際的な知名度は最も高い。数え切れないほど雑誌や新聞に取り上げられ、世界中で視聴されるテレビ番組にも登場してきた。

 艾の芸術作品は世界中で展示されてるが、中でも有名なのがデザインに参加した08年北京オリンピックのメーンスタジアム「鳥の巣」だ(ただし中国の指導体制への不満から、彼は今ではこの作品に距離を置いている)。艾の逮捕で国際的な非難を受けた中国政府は、どこまで反体制派弾圧を続けるのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中