最新記事

地球

「変な天気=温暖化」でなくても大問題

世界を覆う「グローバル・ウィアディング(地球気象の非正常化)」は環境に恐ろしい影響をもたらし始めている

2011年1月21日(金)14時35分
ノリーン・マローン

 振り返れば、今年は世界的に異常気象の年だった。

 ニューヨークのブルックリンでは、9月に竜巻のような現象が起きた。この辺りでは竜巻などめったに起こらない。100年以上も観測されていなかったところへ07年に起き、そして今年だ。

 北半球では昨冬、ほとんどの地域が記録的な寒波と大雪に見舞われ、南半球は記録的な猛暑となった。韓国のソウルでは観測史上最高の積雪量を記録。オーストラリアやパキスタン、ブラジルでは、豪雨による大洪水が起きた。米フロリダ州では厳冬でかんきつ類の収穫が危ぶまれたが、夏になるとアメリカの多くの地域が猛暑に襲われた。

 これらの現象は地球温暖化のせいなのか。最近は「weird(奇妙な)」という単語を使った「グローバル・ウィアディング(地球気象の非正常化)」という言葉もよく使われるが、今の異常気象はこれに当たるのか。

 地球温暖化の影響は、夏の猛暑だけではない。気温が上がればさまざまな異常気象が起こると、科学者は予測する。海水温と海面が上昇するため、降雨パターンから風向きまで多くの変化が起こる。ただし問題は、最近の異常気象がどれだけ地球温暖化の影響によるものかということだ。

 異常気象と言えそうなものが増えていることは間違いない。しかし、竜巻や洪水といった個々の現象や1シーズンだけの異常気象と、もっと広い「気候変動」とは区別して考えなくてはならない。

 どんなに大きな嵐でも、1度だけでは地球温暖化によるものとは断定できない。科学者は長期にわたる気象パターンを観測し、人間による地球環境の変化がどこまで影響しているかを見極めようとしている。

高気圧が発達し範囲拡大

 米コロンビア大学の研究チームによると、昨冬の大雪は勢力の強い2つの気団がぶつかって前線が停滞したことによるもので、必ずしも気候変動の兆候ではない。ブルックリンの竜巻は確かに奇妙な現象だった。発生した場所も時間帯も季節も、異例ずくめだ。それでも地球温暖化のせいとは言い切れない。

 夏の猛暑や冬の異常な寒さは、気圧配置が少しずれるだけで起こる。昨冬の北半球の厳冬は、北極から強い寒気団が流れ込んだためとみられる。だがこれを気候変動に関係する重要な現象として考えるには、こうしたパターンが10年以上続くまで待たなくてはならない。

 パキスタンの洪水は、それだけでは地球温暖化によるものとは言えない。しかし地球規模で気温が上昇すれば、降水量が増え、洪水の規模が大きくなる可能性はある。インドでは雨期の降雨パターンの変化が観測されている。降水量はこの50年間ほぼ一定だが、降雨の頻度が減り、1回の降水量が増えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

焦点:ジャクソンホールに臨むパウエル議長、インフレ

ワールド

台湾は内政問題、中国がトランプ氏の発言に反論

ワールド

香港民主活動家、豪政府の亡命承認を人権侵害認定と評

ビジネス

鴻海とソフトバンクG、米でデータセンター機器製造へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中