最新記事

中南米

ブラジル経済を脅かす年金の時限爆弾

高齢化が超スピードで進み、社会福祉費はヨーロッパの高齢国並み。ルセフ次期大統領は社会保障改革に消極的だが、年金が成長の足かせになる恐れも

2010年11月22日(月)13時50分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ)

負の遺産 ルセフ次期大統領はルラ(右)の政権から好調な経済だけでなく、ゆがんだ社会保障制度も引き継ぐことになる Michel Euler-Pool-Reuters

 来年1月1日に就任するブラジルの次期大統領ジルマ・ルセフは早速、大胆な政策を掲げている。貧困撲滅、緊縮財政、報道の自由の保護などは野党も納得するところだ。反対に、誰もが神経をとがらせているのは、ルセフが「やるつもりはない」と公言していること──社会保障改革だ。

 何しろブラジルの社会保障制度は世界で最もゆがんでいる。ブラジルはとりわけ若年層の多い「若い国」のはずなのに、社会福祉費はGDPの11%を占める。これはヨーロッパの高齢国に匹敵する割合だ。

 しかもブラジルの高齢化は、20世紀のヨーロッパの2倍の速さで進んでいる。民間の年金制度への公金による支援はGDP比で7%以上。30年前は2・5%だった。

 経済が再び成長に転じている今は、社会保障の赤字が膨らんでも何とかなりそうに思える。しかし世界経済の牽引役としての可能性を最大限に発揮するには、年金という爆弾を抱え続けるわけにはいかない。

 社会保障改革に消極的なルセフは、ブラジルの定年年齢が平均53歳と若いことは十分承知しているはずだ。定年を60歳から62歳に延長する年金制度改革法が10月に成立したフランスで、成立前から激しい抗議デモが繰り広げられた、ということも。

[2010年11月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン攻撃、国際法でどのような評価あるか検討必要

ワールド

ウクライナ首都と周辺に夜間攻撃、8人死亡・多数負傷

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃 政治犯収容刑務

ワールド

ゼレンスキー大統領、英国に到着 防衛など協議へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中