最新記事

アフガニスタン

米政府が育てた銃も撃てないど素人警察

2010年5月20日(木)16時08分
T・クリスチャン・ミラー(米調査報道機関プロパブリカ記者)、マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)、ロン・モロー(イスラマバード支局)

 ANCOPのメンバーは16週間の訓練を受け、少なくとも小学校3年生並みの読み書き能力を要求される。これまでのところ、マルジャでの評判はさまざまだ。

「新しい警察は組織化されていて、献身的で責任感があり、ギャングみたいだった以前の警察より役に立つ」と、地元の学校で校長を務めるアサデュラは本誌に語った。一方、地元の商店主ハジ・ノルディン・カーンの意見は逆だ。「新しい警察にもがっかりだ。以前の警察と変わりない」

警官の正体が分からない

 大事なのは警官の質だ。上院外交委員会委員長のジョン・ケリー(民主党)は、「警官を増やすに当たって、忘れてならないことがある。最終目標はタリバン掃討戦に動員する準軍事的組織ではなく、良い統治を進めるための国民警察を育てることだ」と指摘する。現地の米海兵隊を指揮するラリー・ニコルソン准将はもっと単刀直入に「訓練されていない警官10人より、訓練された警官1人のほうがいい」と言う。

 そもそも今のアフガニスタンに何人の警官がいるのか。正確な数は誰も知らない。現地の米軍も、採用者の履歴と配備先を追跡するデータベースの構築を始めたばかりだ。こんな状態では、名簿上に名前だけ存在する「幽霊警官」を割り出すことも難しい。警官隊に紛れ込んだタリバン兵を見分けることなど、とても無理だ。

 それでも警官の増員は続き、訓練も続く。カブール郊外の射撃場で訓練を受けていたハイラ・モハンマド(24)は、読み書きはできないが「タリバンを撃つ練習ならたっぷりやってきた」と言う。

 警官歴2年のうち、1年はカンダハルで、もう1年はマルジャ郊外で過ごしてきた。「戦闘で多くの友人を失った」と、彼は言う。今の望みはANCOPの一員に選ばれることだ。そうすれば今の月給180ドル(危険手当を含む)が倍になるはずだという。

 しかし、それまでには射撃以外の訓練も必要だ。「ここの警察は、住民と良好な関係を築くということを知らない」と言うのは、イタリア憲兵隊のマッシモ・デイアナ中佐。「住民を尊敬し、心を通じ合えるような警官を育てたい」

 国民の安全を守るのが警官の役目だとすれば、そうした資質は50メートル先の敵を撃つ技術よりもずっと大事だろう。

[2010年4月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏首脳会談、イラン情勢「早期沈静化に向けた意思疎

ビジネス

米住宅ローン金利、6.57%に上昇 昨年8月以来の

ワールド

ロシア 、 ドンバス地域のルハンスク州完全掌握と発

ビジネス

英3月製造業PMI低下、中東紛争でコスト急上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中