最新記事

自然災害

「今年は地震が多い」は気のせいだ

ハイチ、チリ、インドネシア、中国──2010年は大地震の当たり年に思えるが、増えているのは地震の数ではない

2010年4月15日(木)17時10分
モリー・オトール

4月14日に中国青海省を襲ったM6・9の地震による死者はすでに600人を越える(写真は翌15日に瓦礫の下から救助された男性) Reuters

 4月14日、中国青海省でマグニチュード(M)6・9の地震が発生。15日朝の時点で死者は600人以上、負傷者は1万人に上ると推定される。その1週間前には、インドネシアのスマトラ島北西部でM7・7、さらに2日前にはメキシコ北西部のバハカリフォルニア州でM7・2の地震があったばかりだ。

 それだけではない。2月末にはチリでM8・8の大地震が発生したし、1月にハイチを襲ったM7・0の地震では、23万人近くが犠牲になった。

 大災害がこれだけ続くと、いよいよ世界の終焉かという気がしてくる。そうでないとしても、2010年が地震の「当たり年」であることは確かなように思える。

 だが、専門家に言わせれば、そうでもないらしい。米地質調査所(USGS)などの専門家は、地震が頻発しているのではなく、地震への関心が高まっているだけだと指摘する。

 歴史を振り返れば、M7以上の大地震でさえ、その発生頻度はほぼ一貫している。西暦1900年頃から現在までの記録によれば、M7・0〜7・9の大地震は年間およそ17回、M8・0以上の「超大地震」も毎年およそ1回発生している。

感知できる地震件数が激増

 もちろん、頻度が一定だからといって最近の地震を軽視していいわけではない。マグニチュードが1・0増加するだけで、地表の揺れは10倍になり、32倍のエネルギーが放出される。今年はすでに、М8・8のチリが「超大地震」に相当するほか、М7.0以上の大地震も5件発生している。

「人間への影響が大きい地震が連続して発生している点では注目に値する」と、米地質調査所で地震予知に携わるマイケル・ブランパイドは言う。「だが地球の視点で見れば、今年の地震の発生件数は異例ではない。興味深いし、恐ろしい話だが、特別なことではない」

 ブランパイドによれば、地震の発生件数は毎年増減しており、平均値とかけ離れた年も多い。その点、過去1年間に起きたM7・0以上の地震は18回で、平均値に極めて近い。この3カ月半で6件という頻度も、平均値よりやや高いだけだ。

 過去10年間で大規模な地震が最も頻発したのは、M8以上の揺れが4件あった2007年。09年にはそうした「超大地震」は1件だけだったが、M7.0以上の大地震は16件あった。

 最悪の人的被害を記録したのは、スマトラ沖地震で大津波が発生した04年で、計22万8802人が死亡した(今年もすでに22万を越える死者が出ている)。

 それでも、最近の数字はどれも想定の範囲内だと、ブランパイドは言う。1943年にはM7・0以上の地震が平均の2倍に相当する32回発生しているし、1963年には記録にあるなかでは史上最大規模のM9・5の大地震がチリを襲った。

 地震の発生頻度は変わっていないのに、「最近、地震が多い」と感じるのはなぜか。地震への意識を高める要因が重なったせいというのが、最も説得力のある答えのようだ。

 たとえば、感知できる地震の件数が増えたこと。米地質調査所によれば、1931年には地震計は世界中に350カ所しかなかったが、今では8000カ所以上ある。
全米地震情報センターが感知する地震は、一日におよそ50件、年間2万件に達する。

 世界中の観測拠点が、以前なら記録されなかった揺れを探知し、目覚ましく進化した通信技術を使ってデータを世界中に送信する。さらに、その情報はツイッターによってかつてないほど広範に広がると、米地質調査所の広報担当者クラリス・ランソムは言う。

「地震のネットワークはますます近代化しており、かつてない速度と正確さで情報を伝えられる」と、ブランパイドは言う。「建物の耐震性から死者数まであらゆる情報が、数分のうちに国内全土、そして世界中に伝わる」

ハイチと中国の地震に関連性はある?

 地震の発生エリアという要因もある。最近の地震が人口の密集している地域でなく、大海原の奥底で発生していたら、これほどの注目を集めることはなかっただろう。

「率直に言えば、より冷徹な要因は人間の数が増えていることだ」と、ブランパイドは言う。「地球上で最も人口が増えているのは赤道付近であり、地震多発エリアもその一帯にある。地球は地震というダーツを投げつけるが、標的(である人口密集地域)が増え続けているため、標的に当たる確率が高まっている。そして偶然、ハイチに的中したりする」

 では、今年起きた悲劇的な大震災の間に何らかの関係はあるのだろうか。ブランパイドは、複数の地震の因果関係を証明できる水準にまで地震研究は進んでいないと語る。少なくともハイチと中国のように局地的に発生した地震で、両者の距離が遠い場合には、相関関係はない可能性が高い。

「チリの大地震はこの100年間で5番目に大規模な揺れだった」と、ブランパイドは言う。「その際の地震波が世界中を駆け巡ったため、いつ活動してもおかしくない状態の他の断層に影響を与えた可能性はある」

「ある大地震が他の地域の地震に与える影響について、いずれ解明される日が来るかもしれないが、少なくとも近い将来ではない。具体的な対策を取れるほどの詳細がわかることはないだろうが、注意を喚起できるようになりたいと願っている」
 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾ

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中