最新記事

事件

英会話講師を殺した安全な国

2009年11月5日(木)16時20分
コリン・ジョイス

「交際」報道に憤る遺族

 ホーカーが日本での生活を満喫していたことは確かなようだ。フェイスブックには、友人と飲んでいる写真や、情熱と愛情に満ちた文章が載っている。6月には、恋人のライアン・ガーサイドも英会話講師として来日する予定だった。

「娘は日本を愛していた。日本人と出会うことが好きで、日本は信頼と敬意に基づいた素晴らしい国だと考えていた」とウィリアムは4月1日に声明を出した。

 よく顔を出していた行徳の数軒のバーでも、ホーカーは思いやりのある気さくな女性として評判だった。ある知人の男性によれば、英文法の教科書を持ってバーに現れたこともあるという。会話だけを教えることが多い英会話講師としては珍しいことだ。

 ホーカーの同僚らは犯人だけでなく、メディアにも怒りを感じている。ホーカーと市橋が「交際していた」という報道によって、親族や友人は傷つけられた。彼らが記者にほとんど口を開かないのは、事実を歪曲して2人に「関係」があったと報じたがるメディアに不信感をいだいているからだ。

 今回の事件はイギリス国内で、2000年に日本で行方不明になり、翌年死体で発見された英国人女性ルーシー・ブラックマンの事件の記憶をよみがえらせた。市橋の自宅前で職務質問中に逃走を許した県警の能力を疑問視する声もある。だがブラックマン事件と違って、容疑者の顔写真をただちに公開するなど、初動捜査が迅速だった点は評価されている。

 ホーカーの同僚が集う行徳のバーでは、テレビに映った市橋の顔写真が冷たい沈黙で迎えられた。

「ここは暮らしやすい場所だった。家賃は手ごろだし、東京から近いので、多くの英会話講師が喜んで住んでいた」と、あるバー経営者は言う。「だが1人の女性の不運な過ちと、1人の頭のおかしい男がすべてを変えてしまった」

[2007年4月11日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米イラン交渉再開巡り期待感

ワールド

イスラエルとレバノン、ヒズボラ巡り直接協議 米国務

ビジネス

米、4月20日に関税払い戻し開始 違憲判決受けた1

ワールド

ウォーシュ次期FRB議長候補、21日に上院銀行委で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中