最新記事

シリア

ブログと宗教とマスターベーション

2009年10月13日(火)12時39分
ダン・エフロン(ワシントン支局)

 きっかけは、ファダル・アタマズ・アル・シバイ(23)のブログだった。シリアでは自慰行為が「若者の間で山火事のように広がっている」と嘆き、「秘密の習慣」に終止符を打とうと呼び掛けた。

 これにシリアの有名なブロガー、アブファレスが反発。「不条理と偽善と聖人ぶった態度に対抗すべく、これまでに経験したこともないような『シリアのオルガスムス』」に達することを呼び掛けた。

 議論はさらにエスカレートした。シリア北部ラタキアのヤザン・バドランは、麻薬やポルノにふけり、ラマダン(断食月)中に堂々と飲食する「モラル崩壊週間」をブログで提案した。部族主義や時代遅れの考え方に反対しようと呼び掛けるブロガーもいた。

「親がのんきにテレビを見ている間に、息子や娘は自分のナニをナニしている」など、アブファレスのブログは卑猥な表現だらけで、赤面せずには読めない。

 シリアが突然、表現の自由のよりどころに化したとは思えない。9月には政治ブロガーのカリム・アントアン・アルバジ(31)がアサド政権を批判したために懲役3年の判決を受けたばかりだ。

 しかし、ブロガーや専門家によれば、インターネット上のセックス映像や性に関する話に、シリアの世俗政府は中東のほかの国よりはるかに寛容だ。

「危険なのは、大統領などデリケートな政治問題を論じる場合だけ」と、バドランは言う。「社会や文化や宗教を論じる場合はまず心配ない。ブログのようなメディアなら、なおさらだ」

 自慰論争の白熱は意外ではないと、ワシントン中近東政策研究所のシリア専門家アンドルー・タブラーは言う。「極度の権威主義国家の場合、大目に見られることは一気に表面化する」

 タブラーによれば、シリアの聖職者はネットポルノの広がりを警戒しており、それがシバイの書き込みにつながった可能性もある。実際、シバイのブログはマスターベーションの害を説く宗教的な引用だらけだ。

[2009年10月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米中貿易巡る懸念が緩和

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ビジネス

米労働市場にリスク、一段の利下げ正当化=フィラデル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中