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イラン核問題、ネオコンの処方箋

空爆は戦争を、核保有容認は核戦争を招きかねないという事態に、イラク侵攻大失敗の汚名をそそぐ秘策はあるか

2009年10月1日(木)17時52分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

放置も攻撃もできない イラン第2のウラン濃縮施設とみられるテヘラン郊外コムの建物。9月25日に存在が発覚した DigitalGlobe-Reuters

 イラン問題でアメリカが進退窮まっている状況を物語る2つの論文が、最近相次いで主要紙に掲載された。

 ネオコンの論客として知られるジョンズ・ホプキンズ大学のエリオット・コーエン教授は先ごろ、ウォールストリート・ジャーナル紙に論文を寄稿。対イラン政策における選択肢は2つしかないと述べている。

 1つはアメリカもしくはイスラエルによる軍事攻撃だが、これは「本格的な戦争を引き起こす可能性がある」。もう1つはイランの核兵器保有を容認することだが、こちらも「戦争という結果に終わるかもしれない。それも核戦争に」と彼は言う。

 かつてネオコンは大々的にイラク侵攻を支持したが、今回もコーエンは「イラン・イスラム共和国の打倒を積極的に追求」すべきだと主張する。ただし、アメリカによる侵攻を主張しているわけではない。イランの現体制を倒すために「アメリカのハードパワー(軍事)よりもソフトパワー(外交)を、あらゆる手段で」行使するよう求めているのだ。

 またコーエンは、もしバラク・オバマ大統領がイランの核保有を許したりすれば、米国内で「医療保険改革案への不平の声など、晴れた日のにわか雨に過ぎないと思えるほどの」激しい非難にさらされるだろうとも述べている。

 果たしてコーエンはこの論文で何を言いたかったのだろう。

 イラク侵攻の惨憺たる結果を前に、もはやネオコンもアメリカ主導で中東世界を作り変えることを求めてはいないだろう――そう思っている人は、考えを改めたほうがいい。コーエンはイランの「狂信的で残酷で無節操な体制」をいつものように引き合いに出し、そうした相手とは「真の交渉も理解も」ありえないと言い切っている。

効果のない脅しで敵対する愚

 だがこの論文が物語っているのは何より、コーエン好みの強硬路線が無意味なことを彼自身気づいているということだ。

 まず、コーエンはイスラエルやアメリカによる空爆が、核開発を遅らせることはできても止めることはできないという点を認識している。空爆が戦争へと拡大しかねない点もだ。

 次に、彼は過去の経済制裁に効果がなかったことも、経済制裁によってイランが(核問題で)方針転換する可能性が低い点も理解している。

 かといって、もっと協調的な路線を試すなど彼にとっては問題外だ。となれば残るは、(経済制裁などによって)イランの「体制転換」を目指すという戦略だけだ。だがアメリカはクリントン政権から現在に至るまでずっとこの戦略を採ってきたし、コーエン自身、それが功を奏するとは主張していない。

 コーエンの提案する対イラン政策は、あらゆる選択肢の悪いところをかき集めたようなものだ。効果のない脅しをかけてイランとの対立を続け、それによって敵対的な関係を維持するというのだから。これはイランに対し、アメリカの無力さを見せつけるとともに核保有へのさらなる口実を与えることになる。

 そうすればイラン国内の強硬派は勢いを増し、変革を志向する穏健派の力は削がれ、若い世代(イランの全人口の70%は30歳未満だ)に、アメリカは「大悪魔」だという概念を植えつけることになってしまう。

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