最新記事

ヨーロッパ

EUを揺るがすマケドニア国名論争

2009年8月7日(金)15時30分
トーマス・ミーニー(コロンビア大学歴史学研究者)、
ハリス・ミロナス(ジョージ・ワシントン大学政治学・国際情勢准教授)

強気の陰にはアメリカの後ろ盾

 より賢明な名前としては、この地方を流れる川にちなんだ「バルダルスカ・マケドニア」が挙げられる。これならFYROMの尊厳とアイデンティティーを尊重できるうえ、ギリシャ北部との区別も明確になる。

 EUとNATOは加盟候補国に対し、国境をめぐる大きな問題がないという条件を課している。しかしFYROMは、ギリシャとの緊張をますます高めている。空港や通り、広場などに古代ギリシャのヒーローにちなんだ新しい名前をつけている。さらに、ギリシャには少数派の「マケドニア人」が無理やり住まされていると、ギリシャの国内問題に口を出している。

 こうした傲慢な姿勢はどこから来るのか。その元凶はアメリカとその同盟国だ。04年、ブッシュ政権はイラク戦争への支持の見返りに、「マケドニア共和国」という国名を早々と承認した。ギリシャが本気でアメリカと同盟国の妨害に走るとは思っていなかったのだ。

 ブッシュ政権は、グルジアは「主権国家」だとリップサービスを送る一方で、コソボでは民族的な分離主義を支持した。この結果、アメリカは自国の都合によって姿勢を変えるという印象を与えてしまった。

 ギリシャとFYROMがともに納得する合意に達する手助けをすることで、オバマ政権はこの悪印象を取り払うことができる。さらに重要なのは、ヨーロッパの平和な未来を確保できるということだ。


Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 05/08/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アンソロピック、来年にもIPOを計画 法律事務所起

ワールド

原油先物は続落、供給過剰への懸念広がる

ビジネス

来年末のS&P500、現行水準から10%上昇へ=B

ビジネス

キオクシアHD株、ベインキャピタル系が一部売却 保
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中