最新記事

米政治

アメリカ政府機関閉鎖をうらやむ中国人

閉鎖危機は政府の機能不全のせいではなく、成熟した民主主義国家と見る人々もいた

2013年10月15日(火)18時05分
ベンジャミン・カールソン

逆に凄い? 政府機関閉鎖の影響は思わぬところへ James Lawler Duggan-Reuters

 アメリカでは政府機関閉鎖が続いているが、今回の事態にプラスの側面を見出した人々がいる。中国の知識人だ。

 当然のことながらアメリカ人は、今回の閉鎖は政府の機能不全の証とみている。しかし中国では、ある種の強さの表れとして捉える評論家が少なくない。今回のような状況は、強い経済力と国民の意思を反映する政治力を備えた民主主義国家でしか起きない----そんな羨むような声が、中国のソーシャルメディア上にはあふれている。

「政府機関閉鎖は悪いことか?」と中国のマイクロブログ、新浪微博(シンランウェイボー)のあるユーザーは問いかける。「アメリカのシステムでは、共和党と民主党と大統領が議論を戦わせるのはごく普通のことであり、本来そうあるべきだ。課税や債務の増加といった問題は、納税者の利害と彼らが収めた税金に関わる。だから彼らに選ばれた政治家や大統領は、そうした問題を軽く扱ってはならない」

 中国で同じような事態が起きたら、すぐに国全体が大混乱に陥ってしまう。だから絶対に起きないと、多くの人が論じている。とりわけ驚きの声が多かったのは、政府機関閉鎖後も、アメリカの州や自治体レベルの政府は機能し続けていることだ。アメリカ在住のある中国人は、「閉鎖されて何日も経つのに、誰も心配していない」と驚きを露わにした。「連邦政府が閉鎖されても、地方政府は機能し続ける」 19世紀の思想家トクヴィルを引用するように、「アメリカを理解するにはアメリカの自治を理解しなければならない」と言った。

 中国の一党支配体制下では、アメリカのように極端な論争や開かれた議論が行われる余地はない。「中国政府は納税者が必死で稼いだ膨大な金を簡単に手に入れ、外国で豪邸を買ったりしている」と、あるユーザーは書いている。

 どちらの体制にも強みはある。アメリカの外交ジャーナリスト、トーマス・フリードマンは、中国の一党支配体制の結束力と権限の強さと比較して、泥仕合に明け暮れるアメリカ政界を批判する。しかしその点は中国も同じ。今回の米政府機関閉鎖を引き合いに出し、中国には独立した市民社会や分権が存在しないことに改めて自国の弱点を見る人々もいるのだ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、一部銀行の債券投資調査 利益やリスクに

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 10
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中