最新記事

米外交

アラブに丸投げ、オバマの中東政策

民主化革命が広がる中東・北アフリカに向けたオバマの政策演説、頻出単語に表れた真意

2011年5月20日(金)15時35分
ピーター・ゲリング

アラブも注目 オバマの演説を見守るパレスチナ・ガザ地区の住民 Ismail Zaydah-Reuters

 バラク・オバマ米大統領は19日、中東と北アフリカに関する政策演説を行った。この地域で起きた民主化革命を支持し、中東和平については67年の中東戦争以前の境界線に基づき、パレスチナ国家を樹立すべきだとの見解を示した。

 演説の中で最も多く使われた言葉は「人々(people)」で、それは適切な選択だったろう。彼が言うように結局のところ、この「地域(region)」で燃えさかる民主化運動を起こしたのはそこの住民で、それを成し遂げなければならないのも彼らだ(ちなみに「地域」は2番目に多く登場した言葉だった)。

 だが「〜しなければならない(must)」を3番目に多く連発したのは、いただけない。さらにpeopleをmustの組み合わせて「人々は〜しなければならない」と言うのは、中東の人々にすれば大きなお節介もいいところだろう。

 演説を聞いた中東や北アフリカ、パキスタンやアフガニスタンの人々は逆に、オバマが「人々」をもっと支援「しなければならない」と主張する。聞こえのいいオバマの主張が行動につながるか、という点についても懐疑的だ。

 オバマは09年にエジプトのカイロで、アメリカとイスラム世界の「新たな始まり」をうたう演説を行った。演説は高く評価され、中東の人々も多くの変化を期待した。しかし彼らにいわせれば、それはまったく実現しなかった。

 ちなみに、今回最も登場頻度の低かった単語の一つは「直面する(face)」。できれば顔をそむけたいのが本音だろう。

GlobalPost.com特約

■チュニジアから始まりエジプトからリビアやシリアまで一気に燃え広がったアラブの民主化運動の深層に迫る本誌ウェブ特集「中東革命の軌跡」も併せてどうぞ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中