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メキシコ湾

原油で酸欠海域「デッドゾーン」拡大か

汚染でバランスを崩した海の生態系が「共食い」に追い込まれるとき

2010年6月30日(水)16時44分
ダン・ミッチェル

死の海 原油の海から何とか這い上がろうとするカニ(6月20日、ルイジアナ州沿岸で) Sean Gardner-Reuters

 原油流出事故が起こる前から、科学者たちはメキシコ湾の「デッドゾーン」が今年は過去最大級になると予測していた。今問われているのは、メキシコ湾沖で起きた原油流出事故のせいでそれがさらに拡大するのかどうかだ。

 デッドゾーンは夏に生まれて成長する。原因の1つは、中西部の農業地帯から出る肥料分を含んだ農業排水だ。ミシシッピ川からメキシコ湾に流れ込むこの排水は藻を異常繁殖させる。この藻が死んでバクテリアが分解するとき、海水中の酸素を大量に消費してしまう。海の中の広大な一帯が、酸欠のため海の生き物が死滅する酸欠海域「デッドゾーン」になってしまうのだ。汚染のために食物連鎖がちぐはぐになり、生態系のある部分が他の部分を攻撃しているようなものだ。

 原油流出はこれまでの被害に加え、デッドゾーンをも広げてしまうのだろうか。可能性はある、と科学者たちは言う。原油を分解するときは、藻を分解するときと同じく酸素が消費されるからだ。だが一方で、原油はむしろデッドゾーンを小さくする可能性があるという科学者もいる。原油による汚染で、藻の繁殖が抑えられるからだ。

 非営利の調査報道機関プロパブリカは、「驚愕すべき量」のメタンガスを問題にする。天然ガスの主成分であるメタンガスは、事故を起こした英石油メジャーBPの海底油田から噴き出す物質の大きな割合、おそらくは70%程度を占めている。そして困ったことにメタンガスは、酸素を食べるバクテリアの成長促進剤なのだ。

 BPは、油田から漏れるメタンガスの大半は燃やしてしまっているので大丈夫だという。だが、BPは今までいつも「大丈夫」と言ってきたのだ。

The Big Money.com特約)

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