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米空軍

さらば栄光のトップガン

2009年12月15日(火)14時48分
フレッド・カプラン(オンラインマガジン「スレート」コラムニスト)

 その念頭にあるのは、強大化した中国や復活したロシアと戦う可能性だ。実際、アメリカと同等の空軍力を持つ2つの敵と同時に大規模な戦争を戦う場合を前提にして、空軍はF22を387機配備する計画を推し進めようとした。

 しかし、その前提自体が現実的ではない。「2つの極めて手ごわい脅威が同時に持ち上がるという事態は、非常に考えづらい」と、兵器の必要性に関する分析調査を監督した空軍高官は言う。

現在開発中のF35で十分

 それに、国防総省の報告書の少なくとも1つは、たとえアメリカが2つの強敵と同時に戦うことになったとしても、現在開発中のF35戦闘機がF22にほぼ近い役割を果たせると結論付けていると、報告書作成に関わった高官は言う。

 F35はF22より小型で安価な戦闘機だ。空中の敵機を撃墜する能力ではF22に劣るが、地上の地対空ミサイルを破壊する能力ではF22よりずっと優れている。ゲーツ国防長官は、この機種を大量に購入したいと考えている。

 7月17日、大統領が拒否権を発動するまでもなく、上院の採決でF22の導入計画を中止することが決まった。票差は58票対40票。F22の導入打ち切りに賛成した議員の数は、政府の事前の予想よりずっと多かった。

 ゲーツはこの上院採決の前日に行ったスピーチで、「ほかの超大国を敵と想定して、その国と張り合い、あるいはその上をいくという目的で」最新鋭の兵器を開発・購入していい時代ではもはやないと述べた。「その敵がとっくの昔に自壊してしまっているとすれば、なおさらである」

 アメリカ空軍も時代の変化に取り残されないために、変わらなくてはならない。華麗なトップガンの時代は終わった。新しい時代が幕を開けたのである。

[2009年10月 4日号掲載]

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