最新記事

米外交

オバマの外交政策は意外にツウ好み?

米最新調査で、オバマの外交政策は一般市民に比べて専門家の評価が圧倒的に高いことがわかった

2009年12月4日(金)17時10分
ジョシュ・ローギン

12月1日に発表した新しいアフガン戦略はどう評価される? Jim Young-Reuters

 バラク・オバマ米大統領の外交手腕を結構気に入っている? そうだとしたらあなたは一般のアメリカ人よりも、シンクタンク「外交評議会(CFR)」の会員と共通点が多いかもしれない。

 CFRと調査機関ピュー・リサーチセンターが12月3日に発表した報告書によると、ワシントンのエリート層はオバマの外交政策を、世間の人々よりかなり好意的に評価していることがわかった。調査対象となったCFRの会員たちはテロや温暖化、イラン、イラク、中国、グアンタナモ米海軍基地、さらには移民といった問題に対するオバマの取り組みを圧倒的に支持している。普通のアメリカ人はというと、それがそうでもない。

「バラク・オバマのこれまでの外交政策に対して、一般市民は入り混じった評価をしている」と、報告書は述べている(外交専門誌フォーリン・ポリシーのブログ「ザ・ケーブル」がこの報告書の詳細を入手)。「テロの脅威と気候変動に関する対策については、不支持よりも支持が上回った。だが移民政策、アフガニスタン、イラク、そしてグアンタナモのテロ容疑者収容所の閉鎖といった問題になると、市民の見解はより否定的だ」

 さらにCFRの会員のほうが「ほぼすべての問題に関して、オバマの外交政策をはるかに肯定的に評価している」と指摘する。

一般市民はオバマの中国政策に懐疑的

「世界におけるアメリカの位置(America's Place in the World)」と題されたこの報告書は、CFRの会員600人以上と一般市民2000人以上に対する調査を元に作成された。報告書は、この1年間のオバマの外交実績だけでなく、今日の重要な外交問題に対する専門家と素人の見方を比較している。

 両者の評価にはかなり大きな差があった。例えばイラクとグアンタナモに関するオバマの政策については、CFR会員はそれぞれ83%と81%が支持している。それが一般市民の場合、それぞれ41%と39%の支持率だった。

 イラン、気候変動、テロ、そして中国をめぐるオバマの外交政策について、専門家の支持率はすべて70%台だった。これは外交政策を専門の仕事にしていない一般市民の支持率を20〜30ポイントも上回った。市民のうち、中国の台頭に対するオバマの姿勢を支持する人は33%しかいない。

結果よりも外交姿勢の変化を重視する

 では、両者とも不支持が上回った問題は? アフガニスタンだ。支持率はCFR会員で42%、一般市民で36%しかない。もっともこの調査は、12月1日にオバマが新しいアフガニスタン戦略を発表する前に行われたことを付け加えておく。

 予想通り、一般市民の評価は支持政党によって大きな差が出た。興味深いことに、「いくつかの問題について、無党派層の評価は民主党より共和党の評価にかなり近かった」と、報告書は述べている。

 専門家については、党派による違いを見分けるのは難しい。CFR会員は支持政党を伏せて回答しているからだ。だが、「オバマの外交政策で最も評価できるものは何かと問われると、CFR会員の大多数は、オバマ政権が関与政策と外交を重視していることを挙げた」という。

 さらに専門家は、結果よりも態度を重視するようだ。CFR会員の80%はオバマが東欧におけるミサイル防衛(MD)計画を撤回したことに賛成し、中東和平政策についても59%が支持している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門

ビジネス

為替、基調的物価に無視できない影響なら政策の判断材

ビジネス

村田製の今期4割の営業増益予想、電池事業で前年に5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中