最新記事

音楽

ジャズ新世代の歌姫たち

2009年11月13日(金)13時24分
アンドルー・バスト、アニータ・カーパラニ

 最新アルバム『ブリューイン・ザ・ブルース』でコントマノウは、ビリー・ホリデイら有名歌手の曲のなかでもマイナーなものを選び、自分なりの解釈で歌っている。

 彼女たちは言語の壁も飛び越え、基本的に誰もが英語で歌っている。ビルジニー・テシュネは南フランス出身だが、アメリカの海兵隊員と交流があった父親から英語を学んだ。「フランス語はジャズには向かない」と彼女は言う。「リズムに乗せて歌うのが難しいから」。そんなテシュネはピュアな低い声で「A列車で行こう」などの曲をカバーしている。

 イタリアのトリノに生まれ育ったロバータ・ガンバリーニは、デビューしてしばらくはスウェーデン民謡をレコーディングしたりしていたが、最近になってジャズのスタンダードに転向した。

 新作『ソー・イン・ラブ』は、サラ・ボーンが40年代に有名にした「ザット・オールド・ブラック・マジック」などを自分流に甘く歌ったものが中心だ。「即興でアレンジ可能な素晴らしい曲の大半が、たまたまスタンダード・ジャズだっただけ」と、彼女は言う。

定番を生まれ変わらせる

 だからといって、彼女たちが新しい挑戦を避けているわけではない。エスペランサ・スポルディングは、ウェールズとヒスパニックとアメリカ先住民の血を引く母とアフリカ系アメリカ人の父の間に生まれ、アメリカで育ったが、英語だけでなくスペイン語やポルトガル語で歌っている。

  「クエルポ・イ・アルマ」は30年代のスタンダード「ボディ・アンド・ソウル」をスペイン語で情熱的に歌い上げたもの。「過去の曲を使ったって、何か新しいものが生み出せる」と彼女は言う。

 それでもスター歌手への道はどこから始まるのかと問えば、昔ながらの答えが返ってくる。「中国の奥地に住んでいて、ジャズミュージシャンになりたいと思ったら、まずはニューヨークかニューオーリンズに行ってジャズをやらなくては」とコントマノウ。それからさまざまな国へ移り、ジャズを世界と分かち合うのだ。

[2009年10月14日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中