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医療保険改革

中絶反対派が誤解するオバマケア

2009年8月25日(火)17時09分
ケイティ・コノリー(ワシントン支局)

 オバマ米大統領にとって最重要課題の1つである医療保険改革。現在は全米各地で対話集会が行われているが、新制度の中身、なかでも人工妊娠中絶の扱いについては誤った情報が飛び交い、冷静な議論の妨げとなっている。
 
 7月末に下院エネルギー・商業委員会で可決された改革法案では中絶についてまったく触れられていない。これがかえって、連邦予算が中絶に使われるのではという中絶反対派議員の懸念を招いている。こうした懸念はまったく根拠がないわけではないが、国民の誤解を招く原因にもなっている。
 
 公的資金から中絶の費用を支出することの是非は、以前から議論を呼んできた。メディケイド(低所得者医療保険制度)から緊急性のない中絶の費用を出すことを禁じたハイド修正条項が成立したのは76年のことだ。

 この点については今回の改革でもさほど変化はなさそうだ。ロイス・キャップス下院議員がエネルギー・商業委員会に提出、承認された修正案では、中絶のために公的資金を使うことを禁じている。

 その一方で同修正案は民間の医療保険や、保険料の積み立て分からという条件付きで公的保険からの中絶費用の支払いを認めており、まさに妥協案と呼ぶべき内容。これが最終的な改革法案に組み込まれる可能性は高い。
 
 だが、これでも反対派の懸念は残る。というのも下院案では、民間保険への加入を希望する低所得者に対し政府が補助金を出すことになっているからだ。

 もっとも既に公的資金からはある意味、中絶費用が支払われていると言えなくもない。政府の助成金は医療機関の運営を支え、中絶を間接的に可能にしているし、一部の州では低所得層の女性の中絶費用の補助を行っている。

[2009年8月26日号掲載]

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