アマゾンの「サソリの毒」が抗がん剤に匹敵していた...「特異な分子のタンパク質」が治療のカギに?【最新研究】
A New Anticancer Weapon

猛烈なサソリの毒なら頑固な癌細胞も殺せるかもしれない PLOYPEMUK/SHUTTERSTOCK
<サソリの毒が標準的な抗がん剤と同じように作用し、がん細胞を死滅させる分子を含むことが判明。しかも副作用も少なかった...>
まさに「毒をもって毒を制す」。アマゾンの熱帯雨林に生息するサソリの毒で、現代女性を苦しめる癌細胞を撃退できる──かもしれない。
皮膚癌と並んで、アメリカ女性に最も多いのが乳癌。アメリカで毎年新たに見つかる女性癌患者の約30%が乳癌で、今年も4万2000人以上(世界全体では約67万人)が乳癌で命を落とすと予想されている。
しかしブラジルの研究チームによると、アマゾンに生息するサソリの毒から、既存の化学療法で用いられる薬剤と同じように乳癌細胞を殺す特異な分子が発見された。
「私たちはこれをアマゾン原産のサソリで発見したが、同じ成分は他のサソリ毒にも含まれている」。研究チームを率いるサンパウロ大学のエリアネ・カンディアニ・アランテス教授はそう語った。
「BamazScplp1」と命名されたこのタンパク質は、アミノ酸が短い鎖状につながった「ペプチド」の一種。少なくとも実験室レベルでは、乳癌の標準的治療薬パクリタキセルと同じように作用して乳癌細胞を壊死させることが確認できた。しかも副作用は少ないという。
でも、その有効成分を量産するにはサソリを大量に飼育する必要があるのでは?
ご心配なく。今の研究者たちは「異種発現」と呼ばれるプロセスを用いる。これは特定のタンパク質を生成する遺伝子を、宿主となる別の生物(通常は酵母やバクテリア)に組み込んで増殖させる方法だ。