「命の選別」は、どこまで許されるのか...900項目の「遺伝子最適化ソフト」と危うい倫理
Choosing the Perfect Baby

癌などのほか、容姿やIQに関する遺伝子マーカーも検査の対象に ILLUSTRATION BY ANDREW CROTTY/SHUTTERSTOCK
<遺伝子スクリーニングで「完璧なベビー」を選ぶ? 体外受精分野に登場した新技術には、倫理的懸念が...>
健康状態や寿命と結び付く遺伝子マーカーに基づいて胚を選ぶ──アメリカを拠点とするDNA検査・分析企業ニュークリアス・ジェノミクスが、体外受精(IVF)の新たな選択肢を公開した。
同社は先日、世界初の遺伝子最適化ソフトウエア、ニュークリアス・エンブリオを発表。「体外受精を行う親たちがそれぞれの胚の遺伝子プロファイルを確認し、把握する手助けをする」と、プレスリリースで紹介している。
それによると、胚の遺伝子構造を分析するソフトウエアで検査できるのは、糖尿病や癌、心疾患のリスクをはじめ、900項目以上。
最もリスクが低い胚を選べば、生まれてくる子供がより長く、健康な人生を送る可能性が高まるという理屈だ。とはいえ確率に基づいて胚を選別する手法には、倫理的懸念も生じる。
利用者は自身のIVFクリニックから入手した最大20個の胚のDNAデータをアップロードして、癌や慢性疾患、認知能力に関する詳細な遺伝子解析結果を受け取る。将来的に持つ可能性が高い瞳の色や髪の色も知ることができる。
検査で調べるのは、一般的な疾患である2型糖尿病や冠動脈疾患、高血圧、および各種の癌の遺伝的寄与に関わるマーカーだ。さらに、鬱や不安障害などのメンタルヘルス上のリスク、身長やBMI(体格指数)のほか、IQ関連のマーカーも対象に含まれている。
こうした包括的な遺伝子プロファイルに基づいて胚を比較し、体内に移植するものを選ぶ仕組みだ。