大西洋航路の往復運賃「5000ドル」の旅...21世紀の「超音速」旅客機は夢か現実か

FLIGHT OF FANCY

2025年5月12日(月)09時48分
シオ・バーマン(本誌記者)

2000年7月25日、コンコルドはパリ郊外で離陸直後に墜落し、113人が死亡。その3年後に退役した NEWSMAKERS/GETTY IMAGES

2000年7月25日、コンコルドはパリ郊外で離陸直後に墜落し、113人が死亡。その3年後に退役した NEWSMAKERS/GETTY IMAGES

「今でもイギリスやフランスには、愛するコンコルドを失ったことへの深い悲しみがある」と、ショールは言う。

「技術は進歩するもので、止まることなどないと私たちは信じていた。でも、止まった。くしくも、コンコルドが初飛行に成功した69年は、人類が初めて月面に降り立った年でもあった。その当時、技術の進歩が止まる時が来るなんて、誰が思っただろう」

それでも晩年のコンコルドは、莫大な開発費とメンテナンスの費用を賄うだけの利益を上げられなかった。運賃は高く設定できたが、あいにく定員が少なすぎた。


しかしブーム社が想定する今回の大西洋航路の往復運賃は5000ドル程度。コンコルドの約1万2000ドル(インフレ調整後)の半額以下だ。現状の亜音速機ならエコノミーで600ドル前後、ビジネスクラスでも2000ドルを超えるくらいだ。

「料金を5000ドル程度に設定すれば、収益性はとても高くなる。もちろん庶民が乗れる価格ではないが、現に何千万もいるビジネスクラスの客なら手が届く」と、ショールは言う。

「最初のうち、新しい技術はどうしても高くつく。しかし規模が拡大し、技術革新が起こるにつれてコストは下がる」

だが、技術面で最大の課題が残っている。独自の新型エンジン「シンフォニー」の開発だ。当初は既存メーカーとの提携を模索していたが、必要な推力と効率、騒音低減効果を満たせるパートナーはなく、自社開発に転換せざるを得なかった。

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