最新記事
進化生物学

セックスでも子育てでも「メスの優位」こそが社会的調和の要因...サルから学ぶ「男女平等のメリット」

ANIMAL INSTINCTS

2025年2月27日(木)15時20分
ネイサン・レンツ(ニューヨーク市立大学教授・進化生物学)
2匹のドウイロティティ

モノガミー(一夫一婦制)を堅持するサルの仲間のドウイロティティはオスとメスの外見にほとんど違いがない MOULULI/500PX/GETTY IMAGES

<現代社会における「性の在り方」の混乱は自然の「再発見」でしかない──霊長類には2つの交配スタイルがあるが、いずれもメスが主導権を握ることで調和がもたらされているようだ>

私たち人間のセクシュアリティー(性の在り方)とジェンダーをめぐっては白熱した議論があり、まさに文化戦争の様相を呈している。

しかしアメリカの進化生物学者ネイサン・レンツ(Nathan H. Lents、ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ・カレッジ教授)に言わせると、性的な関係について単一の正解を求めようとするのは間違いで、むしろ性の多様性こそが種の繫栄をもたらしてきたと考えられる。


以下は、レンツの新著『性的進化:セックスとジェンダー、交配の5億年史(The Sexual Evolution: How 500 million years of sex, gender, and mating shape modern relationships)』(マリナー・ブックス)の抜粋。

著者は霊長類に見られる2つの交配タイプを考察し、どちらも親子の絆を強めるのに役立っているとし、人間の家族の起源にも言及している。

◇ ◇ ◇


わずか2世代(約60年)で、性的な関係についての私たちの理解はすっかり変わった。現状に違和感を抱く人がいるのも無理はない。しかし昨今の議論には、残念ながら生物学やセックスに関わる自然史の視点が欠けている。

性の在り方をめぐる現在の混乱は、私たちの祖先がかつて享受し、他の動物たちが今も享受しているもっと多彩な性的関係を「再発見」する過程だと私は考える。

生物学者たちは、動物が交尾する理由について多くのことを発見しつつある。動物たちは互いの絆を深め、社会の結束を強め、同盟関係を築くためにセックスを利用する。

相手を出し抜き、競争に勝って利益を得ることが目的の場合もある。私たち人間と同様、ひたすら快楽を求めてセックスをすることもある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米主要港ロサンゼルス、5月の輸入は前年比9%減 対

ワールド

ベトナム、米との貿易交渉進展 主要な問題は未解決

ワールド

ベトナムがBRICS「パートナー国」に 10番目の

ワールド

トランプ米政権、入国制限に36カ国追加を検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中