最新記事

サイバー攻撃

ロシア系ハッカーの標的にされたオーストラリア データ漏えいに怯える市民たち

2022年12月4日(日)10時52分

豪政府は、犯行に及んだ犯罪者らを「突き止める」と公約し、「ハッカーを相手にハッキングする」ために、連邦警察や参謀本部国防信号局から約100人を集めたタスクフォースを新たに作ったと発表した。

また議会は今週、1988年の連邦プライバシー法の改正法案を可決し、顧客の個人情報の深刻な侵害や、度重なる侵害を起こした企業に対する罰則を強化した。

身代金の支払いを拒否したメディバンクは、怪しげなアクティビティを察知するためにネットワークを常に監視していたと主張しており、今後の防止策として「察知・鑑識能力」を全システムに導入したという。

個人情報収集に上限

メディバンク事件の数週間前には、オーストラリア2位の通信会社オプタスが、最大1000万件分の個人情報をハッキングされたと報告している。また同国最大の通信企業テルストラも「小規模なデータ漏えい」の被害に遭ったとしている。

連邦プライバシー法の改正について、シドニー工科大学のデービッド・リンジー教授は、前向きな動きではあるものの、データ収集量を制限するために必要な「根本的パラダイムシフト」にまでは至っていないと、指摘する。

「罰則の強化は、その場しのぎの措置に過ぎない。完全に時代遅れなデータ保護制度に関連する問題の解決にはつながらないだろう」と同氏は指摘する。

リンジー教授は、直接関係があり必要な場合にのみデータが収集されることを保証するために、データ最小化の原則が徹底的に導入されるべきだと語った。

また人々は個人情報の削除を依頼できる権利も持つべきであり、これは契約が解消されたときに特に大切になってくると、同氏は述べた。

現在オーストラリアでは、企業が顧客データを管理する際の保管期間に上限が設けられていない。最近のデータ漏えい事件を機に、こうした状況は問題視され始めており、被害者らは、契約解消後もずっと情報が保管されていたとして批判を強めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中