最新記事

ビッグデータ

アメリカ式か中国式か? ビッグデータと国家安全保障をめぐる「仁義なき戦い」勃発

THE BATTLE OVER BIG DATA

2022年11月17日(木)15時01分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

221122p42_CDT_09.jpg

米電気自動車大手テスラの上海の生産拠点 VCG/GETTY IMAGES

中国では、データに関して政府に強大な権限を与える法制度が相次いで導入されている。それによって中国当局は、国内で生成された全てのデータの流れをコントロールし、国外へのデータの持ち出しを制限し、そうしたデータの全てを閲覧する力を得た。対象には、中国国内で外国企業が集めたデータも含まれる。

これを受けてアップルと電気自動車大手のテスラは、中国の国内で収集したデータを保管するためのデータセンターを中国に新設することを決めた。

ニューヨーク・タイムズによると、アップルは少なくとも2カ所のデータセンターで、データを「コントロールする権限」を中国側に譲り渡したという。同社は暗号化を解除するキーを中国側で保管することを受け入れ、中国企業の職員がコンピューターを操作することを許したとされる。

その一方で、中国からの撤退を決めた企業もある。マイクロソフトは昨年10月、傘下のビジネス向けSNS「リンクトイン」の中国版サービスを閉鎖することを明らかにした。

221122p42_CDT_08.jpg

米電気自動車大手テスラの上海の生産拠点。中国は国内で生成された全てのデータの持ち出しを制限している XINHUA/AFLO

バイデン政権も強硬姿勢に

バイデン政権は、少なくとも形の上では前政権の厳しい姿勢を引き継いでいる。昨年6月の大統領令では、外国の敵対勢力と関係があるテック企業がアメリカでもたらすリスクを評価し、その活動を制限する広範な権限を商務長官に与えた。

ドナルド・トランプ前大統領は一昨年、中国発の動画共有サービス「TikTok」がアメリカのユーザーのデータを収集・保管している可能性を示唆し、アメリカ国内での利用を禁止する措置を打ち出した。この方針は激しい論争を呼び、アメリカの裁判所で「恣意的で不合理」と判断されて差し止めになっていた。

ジョー・バイデン大統領はTikTokの利用禁止に関して前政権が打ち出した措置を撤回したが、他の中国企業に厳しい措置で臨む意思は示している。今年3月には、外国の敵対勢力と関係がある企業がもたらすデータ関連リスクに対処する専門グループを商務省に設置した。

今年1月にロイターが3つの匿名の情報源を基に報じたところによると、政府は中国の電子商取引大手アリババのクラウド事業について調査しているとのことだ。しかし、同社に対して国外へのデータの持ち出しを禁止したり、アメリカ人に同社サービスの利用を禁じてはいない。

一方、複数の商務省当局者が本誌に語ったところでは、同省は最近、外国の敵対勢力と関係がある少なくとも4社のテック企業に対する調査を開始したという。「外国の敵対勢力」のなかには、中国以外に北朝鮮、イラン、ベネズエラ、キューバ、ロシアが含まれるが、アメリカでの活動が活発なのは圧倒的に中国企業だということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中