最新記事

ビッグデータ

アメリカ式か中国式か? ビッグデータと国家安全保障をめぐる「仁義なき戦い」勃発

THE BATTLE OVER BIG DATA

2022年11月17日(木)15時01分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

17年には信用調査機関エクイファックスから、1億4800万人のアメリカ市民(つまり成人のアメリカ人のほぼ全員)の名前や誕生日、社会保障番号を含む個人情報を盗んだ。この事件は国家ぐるみで行われた過去最大級の個人情報の窃盗だった。

アメリカ人の個人情報を狙う工作はその後も続いている。ワシントン・ポスト紙が昨年、中国の警察、軍、宣伝工作機関、国営メディアなどが20年初めに作成した政府関連プロジェクト300件の入札書類と契約書をチェックしたところ、ツイッターやフェイスブックのような欧米のSNSから外国人ターゲットのデータを収集するソフトウエアの設計を発注する文書が含まれていた。

その一方で中国は、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)のような通信機器メーカーが世界中で第5世代(5G)通信網のインフラ構築を受注できるように積極的に後押ししてきた。アメリカの法執行機関と情報当局はこの技術が、中国のデータ窃盗をさらに容易にする可能性があると警告している。

マイクロソフトは撤退を決定

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の集計によれば、中国政府は最大750億ドルの補助金、信用枠、減税などの資金援助をファーウェイに提供した。おかげで同社は、ライバルより30%安い価格を武器に世界最大の通信機器企業にのし上がった。

AIの進歩によって、データをめぐる争いはますます重要になっている。AIは国際競争力のカギを握る技術であり、国家安全保障に及ぼす影響も大きいと考えられているからだ。

例えば、標的を狙う誘導ミサイルやドローンの精度をAIによって向上させるなど、兵器の性能アップが期待できる。敵対国の世論を操作したり民主的制度を弱体化させて、軍事大国に新たな攻撃手段を提供することも考えられる。

盗み取った個人データを活用すれば、情報機関が入手したい情報を扱う職に就いていて、しかも経済的に困窮している人物を見つけ出して接触することも可能になるだろう。

AI大国を目指す中国は、2030年までに1500億ドル規模のAI産業を築くために、情報テクノロジーに数十億ドルの資金をつぎ込んできた。しかし、AIの質を左右するのはデータの質だ。機械の知能が正確な予測を導き出せるようにするためには、充実したデータを与えて「訓練」しなくてはならない。

データの戦略的重要性は、中国政府もよく理解しているようだ。中国共産党は既に、データを土地、労働力、資本、テクノロジーと並ぶ重要な生産要素と位置付けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州委、XのAI「Grok」を調査 性的画像生成巡

ワールド

中国、春節中の日本渡航自粛勧告 航空券無料キャンセ

ワールド

OPECプラス有志国、3月の据え置き方針維持か 2

ワールド

インドネシア中銀理事に大統領のおい、議会委員会が指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中