最新記事

コロナ特効薬を探せ

アビガンも期待薄? コロナに本当に効く薬はあるのか

CAN EXISTING DRUGS WORK?

2020年5月20日(水)11時40分
ニューズウィーク日本版編集部

ULRICH PERREY-POOL-REUTERS, ISSEI KATO-REUTERS, CHRISTOPHER OCCHICONE-BLOOMBERG/GETTY IMAGES, COURTESY OF CYTODYN, SCIENCE PHOTO LIBRARY/AFLO, LINDSEY WASSON-REUTERS

<新薬開発よりスピーディーな既存薬の転用。有望視される薬はどれか? レムデシビル、アビガン、ヒドロキシクロロキン、レロンリマブ、カレトラ、そして血漿......。本誌「コロナ特効薬を探せ」特集より>

レムデシビル

Remdesivir
エボラ出血熱治療薬

magSR20200520existingdrugs-2.jpg

ULRICH PERREY-POOL-REUTERS

米食品医薬品局(FDA)は5月初め、新型コロナウイルス感染症の治療薬としてレムデシビルの緊急使用を許可した。大規模臨床試験で効果が確認されたからだ。

米トランプ政権のコロナ対策チームを率いる国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長によれば、臨床試験の結果はこの薬の効果を証明する上で重要な意味があったという。

米製薬会社ギリアド・サイエンシズの開発したレムデシビルは、これまでエボラウイルスやMERSウイルス、SARSウイルスなど複数の新興感染症病原体に対し、動物モデルを用いた試験などで抗ウイルス活性効果が認められてきた。静脈注射で投与する。
20200526issue_cover200.jpg
新型コロナウイルス感染者に対する臨床試験は1063人を対象に行われ、レムデシビルを与えた感染者は偽薬を投与した感染者より回復にかかる時間が平均31%(4日間)短かった。死亡率も偽薬の11.6%に比べて、8.0%と低かった。

ギリアド社はレムデシビルの備蓄を提供しつつ、医療機関に広く配布できるよう増産を進めるという。

一方でファウチは、レムデシビルについて「統計学的に明確な効果が認められる」としながらも、「より優れた治療法開発を見据えての第一歩にすぎない」とも発言している。

アビガン(一般名ファビピラビル)

Avigan
インフルエンザ治療薬

magSR20200520existingdrugs-3.jpg

ISSEI KATO-REUTERS

日本の製薬会社、富士フイルム富山化学が開発したアビガンは、2014年に日本でインフルエンザ治療薬として承認された。

インフルエンザウイルスが転写・複製する際に必要とするRNAポリメラーゼ(RNAを合成する酵素)を選択的に阻害することで、ウイルスの増殖を防ぐ。

新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じく、RNAポリメラーゼに依存する1本鎖RNAウイルスであることから、アビガンのメカニズムが新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果に役立つことが期待できるという。

日本や中国では既に新型コロナウイルス感染者への臨床試験が始まっていたが、アメリカでも4月上旬、マサチューセッツ州の3施設で臨床試験を開始することが発表された。 

ただ、この薬は催奇形性(胎児に奇形を生じさせる性質)の副作用が確認されており、インフルエンザ治療薬として用いる場合でも妊婦への使用は禁じられている。日本では厚生労働省の裁量に従って製造、供給され、医療機関で広く使用されてはいなかった。

富士フイルムは臨床試験を行って、新型コロナウイルス感染症治療への「安全性と効果を評価する」としている。現在の備蓄量は70万人分だが、日本政府は200万人分まで拡大すると発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも利下げ

ワールド

駐日中国大使、台湾巡る高市氏発言に強く抗議 中国紙

ビジネス

米国とスイスが通商合意、関税率15%に引き下げ 詳

ワールド

米軍麻薬作戦、容疑者殺害に支持29%・反対51% 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新作のティザー予告編に映るウッディの姿に「疑問の声」続出
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中