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世界を変えるブロックチェーン起業

Newsweekブロックチェーン大賞:医薬品サプライチェーンを変えるクロニクルド

BLOCKCHAIN IMPACT AWARDS 2019

2019年4月16日(火)17時35分
アシュリー・ランクイスト(世界経済フォーラムのブロックチェーン技術部門責任者)

BET_NOIRE/ISTOCKPHOTO

<世界の医薬品業界にとって重大な問題を解決できるかもしれない――。本誌「ブロックチェーン大賞2019」受賞>

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※4月23日号(4月16日発売)は「世界を変えるブロックチェーン起業」特集。難民用デジタルID、分散型送電網、物流管理、医療情報シェア......「分散型台帳」というテクノロジーを使い、世界を救おうとする各国の社会起業家たち。本誌が世界の専門家と選んだ「ブロックチェーン大賞」(Blockchain Impact Awards 2019)受賞の新興企業7社も誌面で紹介する。

◇ ◇ ◇

アメリカで深刻化している麻薬性鎮痛薬オピオイドの依存症と、物流におけるサプライチェーン管理。両者は一見無関係に見えるが、世界の医薬品業界にとっては重大な問題だ。サンフランシスコの新興企業クロニクルドのブロックチェーンを利用した新サービスは、自社製品の正確な流通履歴を知る必要がある医薬品メーカーにとって朗報になるかもしれない。

2013年、オピオイド問題に危機感を強めた米議会は製薬会社に対し、個々の医薬品が使用者に届くまでの流通経路を追跡する方法を2023年までに考案するよう要求。同様のルールはアジア、南米、EUも導入している。だが、現在医薬品のサプライチェーンを管理している複数の追跡システムを継ぎはぎするだけでは、問題に対処できない。

幸い、サプライチェーン管理はブロックチェーン技術と相性がいい。ブロックチェーンで薬の取引履歴を追跡すれば、医薬品の製造と流通に関わる誰もが、工場出荷からコンテナ船、トラック経由で薬局の棚に並ぶまでの全記録を共有できる。

クロニクルドは製薬大手ジェネンテク、ファイザー、ギリアド・サイエンシズと共同でメディレジャーと呼ばれるシステムの開発に取り組んでいる。このシステムでは、サプライチェーン上の各取引がブロックチェーンを介して認証され、個々の製品の履歴が検証可能となる。

従来の人間による検証は時間と人手がかかり、記帳ミスが起きる余地があった。新システムは医薬品のコスト削減と同時に、偽造品の流通防止にもなる。

メディレジャーは今年中に商用サービス開始の予定。同社は医薬品だけでなく、鉱物資源やアパレル業界のサプライチェーン改善も視野に入れている。

社名:クロニクルド
分野:サプライチェーン
本社:米カリフォルニア州
設立:2014年

<2019年4月23日号掲載>

【関連記事】損害は年5000億ドル ブロックチェーンとIoTでサプライチェーンを変えるインド企業

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