最新記事

温暖化を加速させるホットハウス現象

2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判

CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA

2018年9月12日(水)18時05分
マーク・ハーツガード(環境ジャーナリスト)

共和党の支持も仰いで

難問の核にあるのは、後先を考えずに生産と消費と収益の絶え間ない成長を求めるグローバル資本主義。ブラウンはこの根本的な問題から逃げずに議論しようとする。そこが他の指導者とは違うところだ。

「経済成長は自然と共生できる形、(少なくとも)脱炭素と連動する形に変えなければならない」とブラウンは考える。だが、大衆は成長を求めるから「経済を成長させられない指導者はその地位に長居できない」。

生活習慣も手ごわいとブラウンは言う。カリフォルニア州民が車を運転して移動する距離は、年間で延べ5000億キロ近くに及ぶ。州は電気自動車の導入を推進し、公共交通機関を拡充するなどの対策を進めるが、莫大な燃料の大半が石油で賄われているのが現状だ。

そして、アメリカ人の自動車依存を脅かす政治家に未来はない。カリフォルニア州の共和党議員と石油業界は結託し、ブラウンが成立させたガソリン1ガロン当たり12セントの増税を廃止させようとし、これを11月の中間選挙の争点としている。

一方、環境活動家はブラウンが2万件の油井の掘削を承認したことで、今後数十年は石油の生産量が減らないだろうと批判する。対してブラウンは、カリフォルニアにおける石油産出量は減少傾向にあるとし、「3年連続で減り、1985年に比べれば56%も減った」と言う。

ブラウンはキャップ・アンド・トレード方式が産出量を減らすのに貢献したと考える。企業に対して温暖化ガスの排出量上限を決め、その過不足分を売買させる制度だ。

だが「環境保護派がこの制度に反対するものだから」、30年までの延長を成立させるには「共和党の支援を仰がねばならなかった」と、ブラウンは皮肉交じりに語った。

「環境保護派」の一部は、SB350から州内の石油産出量を30年までに50%削減するという条項が削られたことでもブラウンを非難している。

「法案に賛成しておいて、州知事はおじけづいた」と、消費者団体コンシューマー・ウオッチドッグのジェイミー・コート会長は手厳しい。

こうした批判にブラウンは、石油産出量の削減条項を落とさなければSB350の通過に必要な票を確保できなかった、と反論した。「世界最強の産業の売り上げを半分に減らしますとカリフォルニア州が発表して、反発が起きないわけがない」。記者会見でそう語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、中国製ブリキ鋼板の反ダンピング調査開始

ワールド

イスラエルはガザ停戦努力を回避、軍事解決は幻想=エ

ワールド

「英国を再建」、野党・労働党が選挙公約 不法移民対

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中